モイラ・スチュアート「患者中心の医療」第3版は「健康」をどう論じているか・・・その2
モイラ・スチュアート「患者中心の医療」第3版は「健康」をどう論じているか・・・その2 93ページから 長いので要約にとどめる。
患者のもつ関係性(文脈)は、近位、遠位と分けられる。人為的なものではあるが。
近位の関係性
①家族 感情単位として機能する
②財力
世帯収入と全死因による死亡率の逆相関があることは確かな話である。 既知の生物学的危険因子がすべて補正されたあとも、主として収入によって決定される社会的地位は、死亡率と逆相関を見せる。
この観察事実は研究対象の低収入の人々を一般人口より比較的収入を高いところに設定しなおしてもなお見られるが、このことは低収入で医療へのアクセスが悪化するということ以外の要因が働いている(at work)ことを示している(マーモット1987).
社会経済的に貧しい地域に住む人は恵まれた地域に住む人よりうつ状態や多病に苦しめられ、悲惨な最期を遂げ易い。
社会経済的状態の効果は、お金の苦労や、自尊心、熟練、社会的支援、喫煙、アルコール消費、運動によっては、部分的にしか説明できない。 しかし患者中心のケアが受けられないということで説明できる可能性がある。
③教育
学校に通った年数と死亡率の間には強力な順相関がある・・・?? (逆相関のはず)・・・てっ、原文が間違っているじゃん!
学歴が最も低い層で、最も肥満率が高い。 さらに、教育歴と健康な食生活の間には順相関がある。
合衆国では、高校中退は多くの病気を悪化させる生物学的なさまざまな因子よりも強力な危険因子である。
教育歴は収入に順相関するが、この二つの要因は互いに独立したものに見える。
④雇用
職業歴を聞くことは、患者が毒性や危険性のある曝露を受けている可能性を臨床医にしっかり考えさせることになる。
仕事場はストレス源でもある。
失業は健康にも悪い副作用があるということは覚えておくべきだ。
深いところでは、カッセルが1991年指摘したように「職業を知るということはいろんなことを教えてくれる。社会的地位、教育、特殊な知識、責任能力、パートタイマー労働、収入、筋肉の発達程度、技能、将来の展望、政治、居住、そしてそれ以上のこと
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