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2014年6月16日 (月)

モイラ・スチュアート「患者中心の医療」第3版は「健康」をどう論じているか・・・その1

38ページ

患者中心の医療の第一コンポーネントのなかで

「健康の側面を探求する臨床技法」

臨床医は健康の定義について、それは各人ごとに違い、そして単に病気がないというにとどまらず、患者にとっての健康の意味づけと、生活のなかでの願いや目標を実現する能力などを包含したものだと、いつも心にとどめておくのがよいと思う。ある患者にとっては「健康とは次のマラソン大会で完走する」ことだが、別の患者にとっては「健康とは背中の痛みが緩和されるとき」のことなのである。

すべての医療行為においてヘルス・プロモーション(健康創造)の役割は重要だとする立場からみると、住民が定期的な健康診査や軽い病気でクリニックに来た時、臨床医は次のように質問することが望ましい。

「『健康』という言葉は、生活する中ではどんな意味合いを持ちますか?」

その土地の文化や患者の個性に合わせたこんな質問は、臨床的に二つの目的に役立つだろう。①患者の生活のこれまでは未知だった側面を臨床医の前に開いてくれる ②患者の知識を発展させる、それはカッセルが2013年に言ったように、それ自体で健康創造行動なのである。

臨床医が学ぶべき側面の幾つかは<患者によって気付かれた感受性>である(この章の参考文献において「健康という側面」「健康創造と疾病予防」のみだしのもとに集められたものはすべて重要だが)。

その側面というのは、患者が自分で気づく健康状態や元気感であり、健康への自覚や健康行動に向かおうとする態度であり、生活の中での健康にいいもの悪いものへの気づきであり、いわゆる「自己効力感」と呼ばれる自分で自分の健康を作っていけるという感じの強さである。

もし、患者の病気が重く、いくつもの病気を持ち、入院もしているのであったら、カッセルが2013年に書いているように、次のような類型の質問を使うことで患者の願いや目標を探求することができる。

「いろいろある中で何が本当に困りますか?」・・・今それをすることがとても大事だと思っていることがありますか・・・もしそれができたり、始められたりすると・・・少しは元気になったと思えるようなこと。

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僕としては、このような主観的な健康観も重要だと思っているが、これだけで健康の側面を語ることは余りにも不十分だと感じられる。

それはもしかすると第2コンポーネントのところで深められているのかもしれない。ではそこに進んでみよう。

それは確かにあった。93ページ以降である。

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