なるほどと思ったこと(柄谷行人「遊動論」文春新書2014/1読み直し)
今日、なるほどと思ったこと(柄谷行人「遊動論」文春新書2014/1読み直し)
①新自由主義者がこぞって賞賛する古典「自助論」を書いたスマイルズは、労働運動、協同組合運動の支持者だった。彼にとって、相互扶助のない自助は存在しなかった。すなわち、多くの人の助けで、一見自立しているように見えることが自助だったのである。
②中国の歴史の中で、貧困者が一定の努力を経て豊かになれる階級移動が安定して行われていた唯一の時期は南宋のみで、そこでは自由な思想家が多く輩出した。そのうちの一人が朱子であり、朱子は一般的に思われているような観念的な人でなく、極めて実践的な人だった。飢饉対策である「社倉」の発案者も彼だった。
③武士は、一旦定住した農耕民から脱落し山地に移住した人々で、武芸者という一種の芸能者として社会の周辺にいたとも言える。しかし、ある時、彼等が政治の支配力を確立したのが鎌倉時代以降の話である。
その意味では、定住革命後に脱落して遊牧民となった部族が、定住民を征服して王朝を作った元や清に似ている。
④民族学(エスノロジー)は被支配民族の支配のための研究、民俗学(フォークロア)は、支配民族の同胞の研究と、全く領域が異なる別の学問。しかし、他民族を研究する民族学の方法論を、自民族に応用することで民俗学が生まれたので、方法では同根である。
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