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2014年4月20日 (日)

池澤夏樹の、おそらく近年の最高傑作「アトミック・ボックス」毎日新聞社2014/2

①アメリカがベトナムで地雷を多用したのは、ベトナム社会の「ケアの倫理」を悪用しようとしたのだろう。
「死んでしまえば、葬儀と悲嘆で終わってしまうが、障碍を得て生き残ったら周囲はずっと世話しなければならない。それだけ敵の社会の負担が増し戦争継続の力が奪われる。」332ページ
自分の国は徹底的に自己責任原則を貫きながら、他国に発達したケアの倫理につけ込む。そこには人間の顔は見えない。怪物が生臭い息をしながらこちらを伺っている気がする。
池澤夏樹の、おそらく近年の最高傑作「アトミック・ボックス」毎日新聞社2014/2を読みながら、ふと思ったことである。

②「2025年からピークを迎える高齢者の大群」という日本社会の邪魔な構造物。これを効率良く、自助と互助という美名で片付けよう、あわよくばそこでも大資本に一儲けさせようというのが、政府の地域包括ケアという陰謀。
本格的に「健康権という正義」と「ケアの倫理」による人間の結びつきを打ち立てるべき時代の到来だというのが、僕たちの地域包括ケアという何も隠すことのない構想。
健康権という正義のまえに原爆や原発がありえないことも常識である。
これも、池澤夏樹「アトミック・ボックス」を読みながら考えたこと。
しかし、この小説を読んでいると、やはりなるべき物は小説家だったと思ってしまう。いつもの妄想だが。

③池澤夏樹の最新の冒険小説「アトミック・ボックス」毎日新聞社2014/2の最後。
主人公の若い 女性社会学研究者が、命がけの逃避行の後、発見するテーマが「人間の安全保障」。
武装する国家の論理を否定する思想。
(愚かしい日本医師会は「国家の安全保障は自衛隊と日米安保、人間の安全保障は社会保障、同じくらい金をかけなくては」といい曲げていたが、それは否定されるべき古い福祉国家の上手なスローガンになっている)
この言葉は、民医連の新しい「提言」の最後にも出てきます。そういう意味では「提言」理解の参考書として、この小説を指名したい。
そして、「提言」を広げて行こうとする時、いま一番読んでもらいたい文学者といえば池澤夏樹だ。
秋の保団連医療交流集会の記念講演者にもう決まっている。
そういう眼力では、全日本民医連は保団連に勝てたことがないな。

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