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2014年3月19日 (水)

雑誌「世界」2014年4月号 池内 了「これまでの100年、これからの100年 (上)」

雑誌「世界」2014年4月号は池内 了「これまでの100年、これからの100年 (上)」が面白かった。

池内氏は、現在の科学の問題点として

①要素還元主義への過度の傾斜ー要素還元主義による科学の細分化が限界まで行き着き、それによって簡単に回答の出ないものには「複雑系」というレッテルを張り、事実上無視してきたこと

②ナショナリズムによる国威発揚を目的とした新発見への評価が過大になり、華々しい最先端研究に巨費がつぎ込まれる一方で、継続的な観察・記録の仕事が廃れてしまったこと

③産業側の要請で原発、バイオ、ITなど利潤につながる研究ばかりが優先され、大学への予算配分もそれに従わされたこと

等を挙げ、科学ジャーナリストであるジョン・ホーガンが「純粋科学は20世紀前半でその可能性をほぼ開発し尽くし、これからは科学に投じる予算や才能に見合う成果は望めない」としていることを肯定的に紹介している。

以上のことは医学にも当てはまる気がする。

要素還元主義、すなわち専門分化による技術革新の革命的に華々しい時代はすでに一段落したのではないか。

たとえば、消化器分野で、早期胃癌、大腸癌、肝炎・肝癌の診断や治療に熱狂的な情熱が注がれたような時代はもう来ないのではないか。もちろん、わからないことは多く残っているとしても、おおよそ知るべきことは知りつくされたという気がする。(こういう発言をすることは自らの不勉強の宣言に等しいと言われそうだが、そういう感覚自体が大前進時代の惰性にすぎないのではないか)

今後は、地道な観察に基づいて行う人間同士の交流や社会構造の改善による健康の拡大が主流になるのだろう。

それは、生産第一主義を克服して、浪費を排した生活スタイルに変えていくという人類的要請に照応しているのかもしれない。

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