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2014年2月10日 (月)

ソリッド・ファクツ(WHO欧州事務局 2003)に示された健康の社会的決定要因は、8項目なのか10項目なのか

ソリッド・ファクツ(WHO欧州事務局 2003)http://www.tmd.ac.jp/med/hlth/depHP/tph/www/htdocs/pdf/solidfacts.pdf
に示された健康の社会的決定要因は、8項目なのか10項目なのか

この問題はこの数年間の議論で8項目とすることで決着済み(40回総会方針では不十分ながらそれに沿う図が付せられている)と思っていたのだが、41回総会方針案の註はなぜか39回方針の註にもどって10項目としている。案が決まった時期は、沖縄や東京の選挙を控えて会全体が多忙を極めていたので、註を作った事務方の負担を考えてあえて僕もそのまま意見を言わないでいた。そういう誤解のまま進んでも大きな支障はないとすることが大局を大事にする態度だと思ってもいた。

しかし、きょう阿部 彩「子どもの貧困Ⅱ-解決策を考える」を読み始めると、「はじめに」のところで、阿部さんがなぜパートⅡを書いたかということの説明に出会って、うーんと考え込んでしまった。

阿部さんは財務省の高官たちが詰まる勉強会で「子どもの貧困」について長々と講演した。しかし、じっと聞いていた高官の一人が「よくわかりました。では、何をすればいいのですか」と質問した時、阿部さんは答えに窮したというのである。その時の悔しさを源にこの本を書いた、という。

「解決策の提示」が必要という点で、上記の8項目か10項目かという問題はおなじことを言っているのである。

パンフレットの最初にある「社会格差」は「子どもの貧困」と同じ総論である。次にある「ストレス」は、社会格差が健康格差を生むことの生物医学的な説明である。したがって上記2項目は総論に過ぎない。

続く8項目が肝心の各論であって、理論的には社会格差と健康破壊を結ぶ具体的な媒介要因でもあり、実践的には健康破壊の解決を図るため具体的に着手すべき政策上の領域を示しているのである。

ソリッド・ファクツの画期的な意味はここにあった。
もちろん、社会格差が健康破壊をもたらすことを総論的に証明した「ホワイト・ホール研究」も画期的だったが、言ってみればそれは中心人物マイケル・マーモットにとっても前期の仕事であり、後期に明らかにした健康の社会的決定要因からみればプロローグだった。
*そもそも、1974年の発表で、マーモットさんは、イギリスの官僚の地位と心筋梗塞死の見事な相関を示しながら、今日でいう健康の社会的決定要因については「未知の要因 unknown factor」としているのである。

総論も各論も日本に紹介されるのが遅かったので、おそらく日本ではその区別もつかないまま受け取られたのだと思う。民医連もその例外ではない。

2010年にWHO本体が発表した、「SDHの概念的枠組み」という図では、そのあたりの誤解が一気に解ける工夫がなされている。

(それは、厚生労働省の健康日本21 第2次
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf
の13/158にある図13にもそっと引用されている)

このようにソリッド・ファクツのパンフレットを読み解くのでなければ、以下のような質問に答えられなくなるのでる。

「民医連さん、社会格差が健康を破壊していることはよくわかりました。では、私たちは何をすればいいのですか」

僕は平穏を好む人間である。あえて論争的なことを今の立場で書きたくなかったが、阿部さんの苦悩が分かったのでやむなくここに記した。

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