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2014年2月16日 (日)

「患者中心の医療 PCM」神奈川民医連 あさお診療所 西村真紀先生講演会

2月15日は、山口民医連「生協小野田診療所(内科・歯科)」リニューアルの記念行事として、神奈川民医連 あさお診療所の西村真紀先生にお願いして「患者中心の医療 PCM」の講演会を開いた。

西村先生は、僕より10歳以上若い人だが、カナダの故マックウイニー、モイラ・スチュアート(ウエスト・オンタリオ大学家庭医療学講座)が主宰している「患者中心の医療」の修士過程を正式に修了した日本唯一の医師である。

モイラ・スチュアートさんはケース・ワーカー出身で医師ではないが、世界中の優れた医師の行動を研究することから、「何が医師として優れていることの本質であるか」を抽出して、普通の医師がどうしたらそれを学習できるかをずっと研究している。
(そういう「観察による本質の抽出」という点では、文化人類学や看護学やコーチングとおなじ方法論によっていると言える。)

それが「患者中心の医療PCM」あるいは「患者中心の医療技法PCCM」と名付けられて、いま世界中の医学生が学ぶものになっている。

「患者中心の医療」の入り口は、医師のいう「主訴」と、患者の生活の中にある「受診理由」の双方をきちんと把握することである。

主訴は「頭痛」、ざっとした問診ではありふれた緊張性頭痛だとしても、受診理由が「夫を脳腫瘍で亡くして、働きながら一人で子どもを育てている貧しい女性の頭痛に対する不安」だという場合、「私の医師としてのポリシーとして、この場合、画像検査は決してオーダーしません」と力みかえることは愚かしいとしか言えない。どうしたらその愚かしさから抜け出せるのかという話である。

講演から得た、僕の結論を列挙する前に、西村先生の笑えるエピソードを記録しておきたい。ComComですでに漫画化されているということなので、構わないだろう。

西村先生は7年間高校の化学の教員をしていたが、ある時医師になろうと思い、ひょんなことから医学部受験前に東京・北区の浮間診療所建設班会を見学することになる。そこで熱い組合員さんから医者になったらかならず新設された診療所に「帰って」きてほしいと言われて、6年後に約束を果たす。そこは医療生協の好む美談であるが、僕としては「高校の先生だったのに、高校生体験実習に参加したのですよ」というところが可笑しくて、思い出すと何度も笑ってしまう(笑っているのは僕である)。

さて、「患者中心の医療PCM」についての僕の結論である。

①民医連医療を前進させるコアとなりうる医療論・医療技法であり、民医連全体で研究しなくてはならない。とくに中小病院・診療所はこの医療論・技法を実践するということがマグネット病院・診療所になっていく展望を開く。

②医師一人で「患者中心の医療」は実践できない。「患者中心の医療」を実践する医師を育てるには、「患者中心の医療」を身に着けた他職種の力がなくてはできない。

③患者・住民がこの医療論・医療技法の大枠を知れば、医療の大きな前進が訪れる

そこで、今後の方向だが

④カナダの「患者中心の医療PCM」の修士コース修了医師を民医連で多く養成する(ただし、これにはあるハードルがある。TOEFLの一定の成績と、出身医学部の成績B以上が通信教育コース入学時に必要だからである。学校に行かずビラまきに精を出して、卒業さえできればいいんだろうとうそぶいていた僕らの後輩たちには大きな関門かもしれない)

⑤民医連版の「患者中心の医療」の通信教育を、当面は診療所メンバーに限定してでも始める。必要なスクーリングは東京に集めるのではなく、信頼できる講師陣を各地に派遣して行う。立派過ぎる集会室を作ってしまった生協小野田診療所は西日本会場候補に真っ先に手を挙げるだろう。
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ただ、僕は民医連医療についてPCM一辺倒であるわけではない。
繰り返しになるが、医療実践論から世界観にわたる各階層ごとの代表的な考え方を乗じて作ってみた下のような公式を仮説として、ずっと反芻しているからである。僕の口がもぐもぐと動いてたら、これについて考えているのだと推測してほしい。
民医連医療=【患者中心の医療PCM】 × 【健康の社会的決定要因SDH論】 × 【センやロールズの 社会正義・非営利・協同論】 × 【マルクスの世界観(史的唯物論・経済学)】
<p>
【センやロールズの 社会正義・非営利・協同論】については唐突すぎるかもしれないが、このブログの五つ前の記事 <ファビエンヌ・ブルジェール「ケアの倫理-ネオリベラリズムへの反論」文庫クセジュ、白水社2014/2>を見ていただければ理解していただけると思う。

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