« エヴァ・フェダ―・キティ「愛の労働 あるいは 依存とケアの正義論」 白澤社2010年 の「はじめに」について | トップページ | ケアの倫理を土台にして、正義を論じなくては ・・・ある理髪店での出来事 »

2014年2月22日 (土)

2014年2月度医療生協理事会

本当は浅田真央の発言に見られる「贈与と互酬」について触れたかったのだが、長くて中身のない挨拶ほど嫌われるものはないので、省略。・・・・

2014・2・22 理事会挨拶                                
東日本に大雪被害をもたらした寒さも和らいで、理事会をやっているにはもったいないような天気になりました。ご苦労様でございます。

◆突然、NHKの朝の連続ドラマの話になりますが、末っ子の活男君が「兵隊さんの『ごちそうさん』になる」といって軍隊に志願していきました。今朝の場面を見ていると、確実に戦死が予感されるように演出してありましたが、【資料1】によると3月8日には戦死と判明するようです。

NHKは安倍晋三首相の仲間を会長や経営委員に起用して極右的な傾向を顕著にしていますが、その影響は私たちが見る番組にも直接及んでいます。「脱原発」や雇用・福祉を焦点にした東京都知事選をニュースで全く無視したことも指摘されています。朝の連続ドラマ「ごちそうさん」でも、おそらく新居浜の別子銅山と思える鉱山の鉱毒反対運動を取り扱おうとして腰砕けになったのはその影響かと思えますが、今回の「活男出征」も安倍首相の靖国参拝と響き合うものを感じます。

結局は、20世紀の日本の戦争を、その経験のない世代がどう考えていくかという問題だと思います。

「国のために犠牲となった多くの人のおかげで、今の繁栄と平和がある」のではなく
「戦争責任者たちの誤りによって莫大な戦死者や戦争関連死亡者が生じたにもかかわらず、戦後の日本は復興した。その肩代わりを朝鮮・韓国が、内戦やベトナム戦争参戦という形で背負った」

と考える以外にはないのではないかと思います。資料2に 雑誌「世界」2014年3月号にあった政治学者の坂本義和さんの講演の一部を取り上げておきましたのでご一読いただければ幸いです。

2014年も、戦争と平和の問題は、医療生協運動の原点として深めていきたいと思うところです。

◆さて、生協小野田診療所リニューアルのお祝いからもう1ヶ月も経ちました。診療所医科では電子カルテも動き始め、業務の効率化も進むように思えます。待ち時間問題もほとんどなくなるのではないかと期待しているところです。

この間、2月15日はリニューアル記念講演会を職員対象に開きました。講演してくれたのは、WHOの「高齢者に優しい診療所」のテキストを日本語に訳したグループの一人で、神奈川県の川崎医療生協 あさお診療所の所長をしている西村真紀先生という女医さんで、テーマは「患者中心の医療」でした。

「患者中心の医療」というとごくありふれたもののように聞こえますが、世界でもっとも有力な家庭医療学の名前です。カナダの大学がその中心になっており、世界中の優れた臨床医の行動を研究して、その優れていることの本質を抜き出し、ごく普通の若者が確実に優れた医師になって行くための教育方法を開発しています。

そのさわりをごく簡単に言いますと、大事なことは二つあります。

一つは医師と患者の出会いのあり方です。

医師は医学的に症状をとらえます。たとえば、頭痛の患者さんの話を聞いて、過労による肩こりのための頭痛だと診断します。緊張性頭痛といいますが、これは弱い鎮痛剤を処方して終わりです。

しかし、その片方には患者さんが、その日、その時に診察室に現れる理由があります。

夫を脳腫瘍で亡くしたあと、二つ仕事を掛け持って子供さんを育てることに懸命な母親が、ごくわずかな時間をさいて受診している、もちろん夫の脳腫瘍の思い出があるから、頭痛には強い不安を持っている、というようなことです。子供が一人残されたらどうしようということなど考えながら、お金がかかってもMRIかCTという検査ではっきりさせておきたいと思っています。

この二つが正面からぶつかりあうことなく、医師の「では軽い鎮痛剤を処方しておきましょう」「こういう場合検査をしないのが医師としての僕の誇りです」などというという一方的な話で終わったら、患者の側には見捨てられたという感じが残るだけであり、医療は患者を支えるものではなくなります。

医学用語で言えば「患者の主訴」と、患者の「受診理由」の双方を同時に知る努力が、患者と医師の出会いにはどうしても必要なのです。これをどうしたら医師が身につけられるかが第一です。

大事なことの第二は、その後、医師と患者が共通の土俵に乗らなければならないということです。そこで、何が問題なのか、どんな目標をもつべきなのか、そのため今後医師がするべきこと、患者がするべきことを共通の認識にするのです。ここにも大変なテクニックが必要です。

ざっと言えば、そういう話を聞いて、僕が考えたのは、これから山口民医連で育つ医師はこの「患者中心の医療」のエキスパートとしての道を歩ませなければならないということと、

それだけでなく、ここがオリジナルのカナダの大学を超えるところだと思うのですが、「患者中心の医療」を実践するのは医師だけではない、むしろ、職員全体が「患者中心の医療」に詳しくなって、医師を育てるようにするということでした。

『全職員で学ぶ、「患者中心の医療」』のための通信教育を民医連でやろうということを全日本民医連に提案しようとも考えて、西村先生の賛同も取り付けました。

実は、西村先生自身が、カナダの大学のこの学問の修士課程を通信教育で修了した日本でただ一人の医師だったのです。

この話の結論をいうと、山口民医連が「患者中心の医療」を学び実践するうえで山口県での中心になること以外に、医学生や若い医師に呼びかける中身は何もないのではないかということです。
このことを理解して、医学生対策や医師対策ができるかどうかということに山口民医連の未来がかかっていると思います。

もう一つ、これもカナダの本家にはない発想だと思うのですが、患者・住民が「患者中心の医療」のあり方を理解して、患者として医療を利用するエキスパートになることの重要さを思いつきました。新しい「患者塾」のようなものですが、これは医療福祉生協連に頼むといいのかなぁなどと考えています。

いま、全日本民医連は、医療でも、介護でも、組合員組織でも、中長期の展望を持とうと呼びかけています。
(【資料3 全日本民医連第41回総会のスローガン】)それは単なる事業計画ではなく、どういうスタイルの活動を確立するのかということであるわけで、そのなかに「患者中心の医療」の導入、発展は必ず入ってくるものだと確信していますが、みんなの考えとして普及していくにはしばらく時間がかかろうかと思いますので、ぜひご支援をいただきたと思っているところです。

◆次に、若干の医療情勢に触れておきたいと思います。

2月12日に「中医協 平成26年度 診療報酬改定 答申書」が発表され、各事業所ともその読み込みと解釈に必死という状況です。
今回の改定は、消費税増税をかぶるのを若干補填する部分を外してみれば、実質1.26%のマイナス改定です。この12年間で、合計7.41%の診療報酬引き下げをやったうえでのさらなる引き下げですから、多くの事業所の経営危機や地域医療崩壊をさらに深刻にするものといわざるをえません。

中身を見て行くと、政府厚労省は、「急性期、回復期、慢性期のいずれのステージからも医療機関は常に患者を自宅に帰すという視点で診療に当たる仕組みを作った」と述べています。予想を二歩も三歩も進んで「入院から在宅」へという流れを政策的に強化したものとなっています。
その象徴的な改定は以下の3点です。

①急性期入院
急性期を担っている現在38万床ある7対1病床を数年のうちに9万床分削減することをねらった新要件
②回復期入院
地域包括ケア病棟の新設
③外来
「地域包括ケア診療料・加算」の新設

特に①が実行されれば、7対1に残る病院は、総数が減るなかで重症急性期患者をいままでより短い在院日数で退院させなければならないことになり、現場の医師・看護師などの労働強化も格段に厳しくなることが予想されます。

7対1削減を目的にした新要件の一部は宇部協立病院など、7対1に次ぐ急性期の10対1入院基本料算定の病院にもあてはめられます。

しかし、7対1,10対1維持に耐え切れなくなって、回復期のための地域包括ケア病棟に転換しても、その新要件は、患者の重症度や医療・看護必要度が一定以上であること、在宅支援病院であること、二次救急病院又は救急告示病院であること、在宅復帰率の実績が一定以上であること、データー提出に応じることなど盛りだくさんで、回復期とはいえ、急性期から回復期までの総合的な医療機能を果たすことが求められているというものです。
今以上のことを1ランク下がった「13:1」の看護要員体制で行えというのですから、これは無理難題としか言えないことで、結局は報酬を保障されないまま10対1以上の看護体制を維持し続けるしかないということになると予想されます。

外来に新設される、ある程度高い地域包括ケア診療料・加算も、かかりつけ医という名目で患者を特定の病院や診療所に縛り付けて自由な受診を制限したり、高い患者負担が課せられるという点で、実現性の薄いものです。

在宅医療・介護などの受入体制が質量ともに不十分なままに、今回のように強引な「病院から在宅へ」の政策転換を行えば、最終的なつけは、患者・住民が払うことになります。

以上のような事態にならないように、

公的医療費削減だけを狙った「病院から在宅へ」の政策ではなくて、
「病院医療も在宅医療も」国民の期待するような、あるべき状態にする、

それにふさわしい診療報酬の大幅な引き上げを行うという運動が切迫した課題になっているといえます。

そういう意味で、今回の診療報酬改訂は、理事会はじめ組合員の参加する会議で大いに議論していただきたいと思っています。

やや長くなりましたが、以上で私の挨拶を終わります。熱心なご討議をお願いします。

|

« エヴァ・フェダ―・キティ「愛の労働 あるいは 依存とケアの正義論」 白澤社2010年 の「はじめに」について | トップページ | ケアの倫理を土台にして、正義を論じなくては ・・・ある理髪店での出来事 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2014年2月度医療生協理事会:

« エヴァ・フェダ―・キティ「愛の労働 あるいは 依存とケアの正義論」 白澤社2010年 の「はじめに」について | トップページ | ケアの倫理を土台にして、正義を論じなくては ・・・ある理髪店での出来事 »