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2013年11月29日 (金)

診察室に家族が一緒に入室してくることについて

僕は人見知りの激しい医者である。

診察室に、患者と一緒に家族が入るのを嫌うのはそのせいだ。

家族のすべてがそうではないが、ほかの家族メンバーに診察風景を報告するためこちらをじっと観察しようとする家族はいやだ。そういう目にさらされては実力が発揮できない。

それに30歳にもなって、妻や母が自分の症状を説明するのに抵抗しない社会人の患者については、「自立した社会人としてどうなのか」という憤りの混じった教育要求が湧いてくるのである。「自分の症状は自分でしゃべりなさい」といって家族の退室を求めたことも再三だった。

それでも家族からの情報は必要なので、患者診察と家族からの情報聴取はそれぞれ別個にするやり方を通してきた。

しかし、今日、それも無用な自意識過剰のなせることだったのではないかと、はたと気づいてやめることにした。

実に61才での転換である。

患者と家族の関係は、二人一緒に診察室に入ってくる様子を見ないとわからないことも多い。こちらの説明への両者の反応の違いもある意味興味深い。

嫌でたまらないと思っていた、過剰に患者の代弁者となって要求の多い家族の態度も、なぜそうなっているかに焦点を合わせれば、嫌というより、重要な観察対象となる。

要は、「家族に自分の症状を代弁させるなんていい年をした自立した大人のすることではない」などという価値判断を捨て、「ドモル自分を見られたくない」という自意識を捨てて、ひたすら患者中心の医療のための観察者になり切ることがまず最初に必要なのである。

そもそも、僕を観察することが目的の家族など本当はいなかったのではないか?

まぁ、ビジュアル系の医者であることは間違いないのだとしても、だ。

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