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2013年9月 2日 (月)

最も安上がりな認定医更新法2

2011.8.17に「最も安上がりな認定医更新法」という記事を書いているが、今日はその続き。

2013年度のものである。

1:アニオン・ギャップ(Na-Cl-HCO3)正常、HCO3低下、低Kの著明なアシド―シスをきたす疾患を問う問題。

尿細管性アシド―シスRTA(renal tubular acidosis)という、低Kとアシド―シス併存とい特異な病態を呈する疾患についての問題。

遠位尿細管性アシド―シスは、H+排泄障害、HCO3再吸収障害によるもの。CLの状症のためアニオン・ギャップ(Na-CL-HCO3)正常である。膠原病の中でもシェ―グレン症候群や、PBC原発性胆汁性肝硬変で生じやすい。

近位尿細管障害のファンコ―二症候群ではアシド―シス、低Kとともに尿糖陽性などがある

RTAと対照的にアルドステロン症では尿細管でのK排泄過多による低Kを代償してアルカローシスになる。血圧が上がらないアルドステロン症と言ってもいいBartter症候群でも同様。

2:開腹手術後にイレウスを繰り返す若い人に適当な漢方薬:

大建中湯だろう。潤腸湯はも便秘に効くが、高齢者・虚弱者向き。

3:左室収縮不全による慢性心不全の薬物療法

有症状でも無症状でも、とにかくACE阻害剤投与から始まる。

4:消化管感染症後のギラン・バレ症候群。最近はまず軸索障害が来るとされている。

髄液での蛋白細胞解離が有名だが、それがはっきりするのは発病して10-20日位。早期には髄液正常のこともある。それでも髄膜炎でないことが明らかになるので検査はしておいた方がよい。

自己免疫性の要素が強いので、自己抗体が診断に有用。

いろんな病気に対してあまり耳にしない自己抗体が最近は開発されている。

①抗アクアポリンaquaporin4抗体は視神経脊髄炎・・・短時間のうちに両側視神経と脊髄の両方に病変が出現する特殊な疾患。多発性硬化症(Multiple sclerosis)の1病型としていいのかどうか。

②抗ganglioside GM1抗体・・・これがギラン・バレ症候群

③抗NMDAR抗体・・・卵巣奇形腫に合併する脳炎(辺縁系脳炎)

④抗P/Q型VGCC抗体・・・肺の扁平上皮癌に合併する筋無力症、すなわちLabert -Eaton症候群

⑤抗neuronal nicotinic acetylcholine receptor(ganglionic AchR)抗体・・・自己免疫性自律神経障害・・・交感神経障害症状:起立性低血圧、無汗症
副交感神経障害:膀胱直腸障害、脈拍変動、口渇、瞳孔収縮異常。その他、末梢神経障害、MG、Stiff-person症候群、不随意運動などの合併例も。

5:ギラン・バレの治療は、大量の免疫グロブリン静注である。最近も一例、これを実施、経過は極めて良かった。

6:逆流性食道炎について:胸やけ症状は必ずしも内視鏡所見と相関しない。

7:急性肺血栓.塞栓症を診断した時は、まずへパリンとワーファリンによる抗凝固療法を開始する。

8:誤診の原因になる思考の偏りのパターン

①anchoring bias 最初に錨(アンカー)を下した考えに固執してしまう

②availability bias 最近経験した類似例に固執

③hassle bias 自分が最も楽に処理できるような説を取る

④Occam's razor 思考節約の原理

たとえば、「貧血→消化管出血」というステレオタイプな考え方

⑤overconfidence bias 他人(特に指導医)の意見を信用し過ぎる

9:尿路結石予防にいいこと、悪いこと

脂肪は蓚酸濃度を高める、食塩は尿中カルシウムを増やす、タンパク質は蓚酸・尿酸・カルシウムの尿中排泄を増やす、アルコールは尿酸濃度を上昇させる、で尿路結石促進。

柑橘類は、クエン酸が尿中のCaの結石化を防ぐ。

本当だろうか。意味のある問題なのかなぁ。

10:60歳男性が、数ヶ月前から頚部リンパ節数個が次第に大きくなってきたという時、悪性リンパ腫や、結核性リンパ節炎、癌の転移、原発性マクログロブリン血症(形質細胞がIgMをモノクローナルに産生する、悪性リンパ腫に近い疾患、血液粘度の上昇が著しい、多発性骨髄腫と違ってリンパ節の腫大が目立つ)を考えるが、発熱がなければ、「伝染性単核球症」は考えなくてよいだろう。

11:コリンエステラーゼ阻害薬は、認知症に使うアリセプトとか、神経因性膀胱に使う ウブレチド、独裁政府が反体制派に使うサリン、有機リン系の農薬などがある。

これらの作用の中には、便秘・口の渇き・尿閉・高血圧はない。その逆である。副作用として問題となるのは徐脈である。

民医連新聞2013年9月2日号に意外な副作用が掲載されていた。分泌液が増えるので、誤嚥性肺炎も起こりやすくなるのである。

12:発熱、サーモンピンクの発疹、関節痛とくれば成人スチル病である。自己炎症症候群の一つだから、CRPは高くても自己抗体は陰性で血沈の亢進もなし。しかし抗核抗体80倍程度はありうるかもしれない。

検査の決め手はフェリチンの高値だというのは常識。 

しかし、この問題は難問だった。

13: 膵臓のIPMN(主膵管型)の癌化の治療法は、標準的には膵頭十二指腸切除+術後補助癌化学療法である。

14:肺の扁平上皮癌に伴う高Ca 血症による意識レベル低下。

これを肺の扁平上皮癌や乳癌やATLに多い悪性腫瘍随伴高Ca血症とするのに行う検査は 副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHyP測定。

15:肺炎球菌ワクチンは65歳以上が適応である。

16:在胎23週までの妊娠初期では随時血糖で糖代謝異常をスクリーニングする。

随時血糖が120―200だと妊娠糖尿病を疑って、糖負荷試験をしなければならない。200以上だと明らか糖尿病 の診断基準を確認する検査に進む。

*妊娠中に発見される耐糖能異常には、1. 妊娠糖尿病と 2. 明らかな糖尿病の2つがあることとなる。

したがって、食後血糖が186とかA1cが6.2であるなど、2 あきらかな糖尿病に該当しない時は75gGTTをして、1を証明する必要がある。

治療はまず食事療法、改善しなければインスリン使用である。

17:骨髄異形成症候群MDSにはより精密な検査法が出現して、輸血の繰り返しから解放される人も現れている。ただMDSの数%である。

骨髄染色体検査Gバンド分染法では第5染色体の長腕欠失を認めるものがあり、5q-(マイナス)症候群と呼ばれ、貧血の程度が高度である。また、骨髄中には単核の巨核球が認められるという特徴がある。

最近5q-症候群にはサリドマイドの誘導体である「レリナミド」が有効と分かって、頻回の輸血しか治療法のなかったMDS領域では話題となった。

ただ、この薬はまだ高く、年間483万円×自己負担割合の患者負担が発生する。

18:肺腺癌でEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性。多発骨転移があり、痛みが強い。パフォーマンス・ステータスは3(身の回りにある程度のことはできるが,しばしば介助がいり,日中の50%以上は就床している)。CTでは両側の肺内にも転移多数。初回の治療薬は何がよいか。

有用な薬剤はEGFR-TKIであるが、市場にはイレッサとタルセバがある。

日本肺癌学会の肺癌治療のガイドラインⅣ期非小細胞癌一次治療  http://www.haigan.gr.jp/uploads/photos/614.pdf

では、非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性、パフォーマンス・ステータス3ならイレッサ単剤と明記されている(6ページ)。

これが扁平上皮癌であれば、EGFR遺伝子変異の検査は不要で、パフォーマンス・ステータス3であれば化学療法は勧められないとしている。

関連知識 

*クリゾチニブは同じく非小細胞肺癌に用いる薬だがALK(anaplastic lymphoma kinase 未分化リンパ腫キナーゼ)遺伝子変異陽性のものに適応がある。

*ベバシズマブ(商品名アバスチン)も同じく非小細胞肺癌に使う薬で、VEGF血管内皮細胞増殖因子に対するモノクロナール抗体だが、カルボプラチン+パクリタキセルとの3剤併用で用いる。

19:疾患とその背景。

食道扁平上皮癌はアルコール、胃MALTリンパ腫はヘリコバクタ・ピロリ、胃カルチノイドはA型胃炎→高ガストリン血症、胃癌は萎縮の拡大→ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ3以下+ペプシノーゲンⅠ70%以下。

最も意外で確かなのは、大腸癌とに対する肥満である。

20:リウマチで抗CCP抗体陽性であればリウマトレックスMTX週1回投与を開始する。

21:COPDの増悪抑制効果が認められているのはマクロライド系薬である。

22:70歳未満の人の真性多血症をどうするか。

70歳過ぎると、ハイドロウレアの発癌性の危険も考慮する必要が減じるので、瀉血+ハイドロキシウレア内服でHT45%未満を目指すのだが、それ以下の年齢では瀉血のみでHt45%未満を目標とする。

23:

*出血しているとHbA1lcは期待される値より低くでる

*グリコアルブミンはHbA1cに比べ早く変動する

*A1c NGSPはJDSにくらべ0.4高い

*ネフローゼ症候群では、グリコアルブミンは期待される値より低くでる

*顕性蛋白尿は、尿中アルブミン300mg/gCr以上に相当

24:著明なMR(逆流が左房全域に達する)

*虚血性心臓病の合併症(乳頭筋不全)によることも多い

*リウマチ性は減っている

*感染性心内膜炎は常に警戒すべきで、抜歯の前の抗生剤服用も欠かせない

*診断はエコーで十分

*左室機能が保持されている段階で、悪化する直前の手術が最も乃ゾ尼志位

25:

インフルエンザウイルスによる肺炎は、白血球上昇もなく、膿性痰もなく、XPではConsolidationを呈さない。インフルエンザ後にこれらが揃えば、細菌性肺炎の合併であり、CTRX投与が適切である。

26:めまい、吐気を伴って発症したワレンべルグ症候群、すなわち、延髄外側梗塞の症状。画像では梗塞は右側にある。

*右の四肢の運動失調

*右側のホルネル症候群(交感神経麻痺=縮瞳、無汗」)

*右側顔面の温痛覚低下、左側体幹の温痛覚低下

27:70歳以上のCKDで腎臓専門医紹介基準 eGFR30ml/分/1.73平方m以下

28:oral allergy syndrome:気道・皮膚アレルギーの人が、共通抗原を口にすると全身症状を呈するというもの。代表的なのはラテックスー果物アレルギー、花粉ー果物アレルギー。

29:エピペンを常時携帯してアナフィラキシ―・ショックに対処するべきである。

原因食物は回避する。

30:クローン病

*結腸には縦走潰瘍が多く、肛門病変が多い

*小腸検査が必要である

*生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が検出される。結核のように乾酪性類上皮細胞肉芽腫ではない。

*インフリキシマブ=レミケード:抗TNF-α製剤が有効

*副腎皮質ステロイドも有効である。

31:副腎不全。色素沈着をきたすアジソン病。かっては副腎結核が最も多かったが、今では、自己免疫疾患が最も多い。これでは、副腎は両側とも委縮している。両側副腎が大きくなっているのであれば、癌の両側転移が多い。乳癌と肺癌で60%。これの診断にはFDGーPETが最も有用。

32:1秒率40.5%、対標準1秒量〈%FEV1〉 36.7%のCOPD。対標準1秒量が30%以上、50%未満はⅢ期、重症とされる。さて、この人が、感染によるよる増悪で来院した時することは、抗菌薬、テオフィリン点滴、ステロイドの静脈注射、メプチンなどのβ茂樹役を反復吸入するのはOKである。SpO2が88%なら酸素投与もするが、0.5L/分位の少量から始めた方がよい。CO2貯留も伴っているはずだからである。

33:花粉症の治療。ナゾネックスの点鼻、オノン内服、早めのジルテックの内服、スギアレルゲンによる免疫療法、はするだろうが、持続性ステロイドのケナコルトの筋肉注射をしてはならない。翌年のリバウンドが激しいなど、副作用の方が効果を上回る。

34:在宅での大腸癌ターミナルケアは、40歳以上なら介護保険でのサービスが使用可能なので積極的に使うべきである。

35:妊娠性血小板減少症 (GT:gestational thrombocytopenia)というものがあることを知っておく必要がある。

それはHELLP(溶血性貧血+肝酵素上昇+血小板減少)に先行する可能性があるが、まだ溶血はない。また偽性血小板減少症のように、血小板凝集もない。

36:リウマチ性多発筋痛症は、近位筋の自発痛を特徴とするが、関節痛もある。ただし関節変形や、筋肉把握痛はない。CRPが高値になる点で線維筋痛症と違う。MMP3も高値になる

治療はステロイドである。

37:血管内外に水があふれれば、下腿に浮腫を生じ、頚静脈も怒張する。っしかし、肝硬変末期では血管外のみに水があふれている。下腿の浮腫はあるが、頚静脈怒張はないだろう。

38:バセドウ病の治療をする時、メルカゾール(M)を選ぶか、プロパジール(P)を選ぶかは一応決まりごとがある。

*無顆粒球症はMに多い。*妊娠初期【4-7周】はPを選ぶ*MPO-ANCA関連腎炎の合併はPで多い *PとMの間に治療効果の差はない 。*相当期間甲状腺機能正常化した状態が続いたうえでTRAbが陰性化すれば、MやPを中止しても再発率は10%程度

39:右室梗塞による右心不全で、心拍出量が低下したとき、ニトロ製剤は禁忌。前負荷を低下させてかえって悪化する。その時必要なのは、前負荷を増やす輸液なのである。

40:脳の動静脈奇形(石灰化)でくも膜下出血。まずは脳血管造影をして治療方針を立てる。

41:肝細胞癌。 肝臓周囲にリンパ節転移。もはや経皮ラジオ波焼灼療法RFAの適応とならず、緩和ケアの対象である。

42:臨床像 特発性肺線維症(IPF)、組織像通常型間質性肺炎(UIP)は7種類に分類される特発性間質性肺炎のうち、唯一CT上の蜂巣肺所見で診断がつき、組織診断不要である。

43:肥満で尿ケトン(-)、糖尿病性網膜症、神経障害があるのなら初めて診断した糖尿病患者の治療はまずは食事療法。

44:QFTはBCGに影響されないが、患者血中ののT細胞が結核菌由来抗原に反応して賛成するインターフェロンγを測定する検査だから、患者がステロイドを服用したりという免疫状態には影響される。非結核性抗酸菌症への反応はない。既往感染と新たな感染を区別することはできない。ツ反に比べれば、偽陰性は少ない(すなわち特異度高い)。

45:糸球体性血尿を最もよく表現するのは赤血球円柱。白血球エステラーゼという検査は尿中好中球の活動の表現である。変形のない尿中赤血球は糸球体由来でない。尿沈さで赤色球Ⅰ-4個は正常範囲。尿潜血強陽性は感度は高いが糸球体性血尿にとっては偽陰性が多い。

46:明け方の胸痛、ST上昇で特徴づけられる冠攣縮性狭心症には、ニトロ製剤がよく効くが、根本的治療薬としてはCaブロッカーである。

47:昏睡、呼吸数6回/分、心拍30-40、ショックになる低体温症の患者の予測体温は28度以下である。

このとき、心電図ではJ波と呼ぶQRSの直後に出現するST上昇がある。

*このJ波は、Brugada症候群でも見られる。

48:成人の細菌性髄膜炎の80%は肺炎球菌。残りは髄膜炎菌。前者はグラム陽性菌、後者はグラム陰性菌。脊髄液のグラム染色で区別可能。

グラム陽性菌だったらカルバペネム投与から開始。バンコマイシンもよい。アンピシリンは最近耐性菌が多い。細菌検査で薬剤感受性を待っている余裕はない。抗菌薬投与前にステロイド投与することが推奨されている。

49:レジオネラ肺炎は届け出義務のある4塁感染症である。細胞内寄生菌なのでエリスロシンやりファンピシン、ニューキノロンが選ばれる。

大半はLegionella pneumophileによる。ヒト―ヒト感染はない。

尿中抗原キットにはレジオネラ属全体をカバーしないものもある。

50:輸血製剤に含まれる白血球抗体が患者の白血球と反応することでほ体が活性化され、それによって肺胞毛細血管がダメージを受け呼吸困難が急速に出現するということがある。

TRALI : Transfusion-Related Acute Lung Injury と呼ばれる。輸血後数時間で発症する。米国における輸血関連死亡症例報告の中で3番目に多い。

輸血後1-2週後で現れるGVHDとは時期も病像も違う。

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