雑誌「」2013年10月号 尾藤廣喜弁護士インタビュー「生活保護改悪攻撃にいかに対抗するか」
2013年8月から生活保護基準のかってない引き下げ(平均6.5%、最大10%)が実施されることになり、生活保護受給中の当事者からの発案を尾藤さんたちが後押しして、「1万人の不服申し立て審査請求」が行われている。
いま、生活保護受給者たちに対する攻撃は、国民年金受給者とワーキングプアの労働者から最も激しい。貧困者が見事に分断されているのである。
不服申し立て審査請求自体は、結論が見えていると尾藤さんは言っている。これだけの単体の運動に終わっては意味がないのだ。
生活保護基準の引き下げは、すぐに最低賃金、子どもの就学援助の切り下げに通じ、そこから始まって、住民税非課税、医療費自己負担限度額、介護保険サービス自己負担限度額、保育料軽減、障害者居宅・通所・入所サービス料、難病患者負担医療費などの基準引き下げ、さらに本丸としての国民年金に及ぶ極めて広範な影響が襲ってくることを知らせる運動にならなくてはならない。
そして、その次にやってくるものもすでに明示されている。
2013年8月6日に発表された社会保障制度国民会議の最終報告は、介護、医療、年金、保育など社会保障のあらゆる面での国民負担強化、給付引き下げを宣言している。
日本の社会保障が総攻撃されようとしており、その先駆けが生活保護基準の引き下げなのである。
だから、不服申し立ての審査請求をした人達を孤立させず、彼らの声を受け止め拡散することが僕たちにとっては極めて重要になっている。
不服申し立てにさえ、行政側は水際作戦を取り、「社会福祉事務所では受け取らない、本庁に持っていけ」という態度だったことも触れられている。怒りを感じない人はいないだろう。
尾藤さんのインタビューを読んで、僕としても、ぜひ不服審査請求した患者さんたちに、ぜひ病院前でこのことを訴える集会をしてほしい旨を伝えることにした。
「療養条件の困難に苦しみ、みずから改善しようとする患者会」が出来るのなら支援を惜しまないつもりだ。
健康権理念やSDH(健康の社会的決定要因)の知識は、まさにその人たちが立ちあがるためにあるのである。
その運動に触れれば、実は僕ら99%側の人間が貧困リスクの崖の上で生活していることもよりはっきりと見えてくるはずである。
そうして「みんなが声を上げる」瞬間がやってくる。
インタビューの終わりの方では、「生活困窮者自立支援法案」の、積極性も含みつつ、実際には、新たな水際作戦の道具となったり、貧困者をブラック企業に売り渡す手助けをするものになるという危険の方が大きいという丁寧な説明もなされている。
この秋、生活保護改悪から始まる社会保障への総攻撃と闘うために役立つインタビューで、特に若い人に勧めたい。
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コメント
野田先生、いつも過分のありがたいコメントをいただき感謝致しております。生活保護問題は、生活保護利用者だけの問題ではなく、市民全体に関わる問題であることをもっともっと広げなければ今の状況を切り開くことができないと思います。今後とも、暖かい連帯のエールと行動で力をお貸し下さい。
投稿: 尾藤廣喜 | 2013年9月28日 (土) 20時16分