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2013年8月19日 (月)

山口県保険医協会へのレポート:中野一司氏講演会

山口県保険医協会の理事を10年以上続けた。

その後、全日本民医連での仕事が始まったので、理事は止めて「地域医療部」というセクションだけを担当することとしている。

その地域医療部では毎年、その時どきのオピニオン・リーダーと目される若い人の講演会を企画してきた。今年は、鹿児島でクリニックを開き、第10回在宅医学会の大会長などもして活躍している中野一司さんを呼んだ。

在宅医療の関係者はたくさん集まり、盛況だったが、主催者側の保険医協会会員の熱気はやや乏しかった。

そのことを踏まえて、協会の月報に短い文章を一つ書くことにした。

福島の被災地視察の帰りの飛行機で書いた。

あまり推敲されておらず、開業医師に対する上から目線の部分も感じられて一言で言って「嫌みな文章」になった。

それでも、そのままここに収録しておこうと思うのは、書いている時の自分の気分を含めてありのままに記録しておきたいという気持ちが働いたのである。

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 20世紀にようやく確立した「病院の世紀」は 終焉し、21世紀は「地域包括ケアの世紀」になるだろうと予言して話題になった猪飼周平「病院の世紀の理論」有斐閣2010を持ち出すまでもなく、医療をめぐる情勢がパラダイム・シフトと呼びうる大きな変化に直面していることは、医師仲間の会話のみに終日を過ごしていない限り、誰もが感じていることである。

  その変化を中野一司氏のように「キュアからケアへ」と呼ぶか呼ばないかは置かれた立場で違いはあるだろうが、在宅医療と介護との結びつきなしに今後の医療のあり方を語れないのは間違いない。

 ただし、「キュアからケア」という語句を採用するとしても、キュアを急性期
医療、ケアを介護とするのは単純に過ぎるだろう。変化はそこに起きているのではなく、人間の自律(自己決定)と参加が医療の場にも貫かれて行くということが本質的な進歩なのである。
 

 自律と参加がなければ健康は損なわれる、逆に自律と参加が保障されれば障害がどう高度であっても健康への志あるいはQOLは保たれる。必要なのは、それを認識した社会的支援である。そのことは急性期医療でも在宅医療でも介護でも変わらない。

  たとえ介護の重要性をいくら強調するとしても、そのことを見落とした議論は家族介護責任論から脱することができず、「介護の社会化」を妨害するものとなるだろう。今、政府が用意しつつある介護保険法改定がまさにそれである。

 私たちが在宅医療を重視するのは、政府のように急増する死亡者の看取りの場を病院から遠ざけたいからではない。地域と深く結びついた療養こそが、最期までQOLを高く保つ方法として多くの患者にとって欠かせない選択肢となっているからである。

 中野一司氏はそのことを十分説得力を持って語ったと思う。

  振り返れば、山口県保険医協会地域医療部はこれまで臨床倫理と総合診療の紹介に力をいれて来た。

 佐賀の三瀬村診療所の白浜雅司氏の臨床倫理4分割法はすでに常識となった。

 岐阜大の藤崎和彦氏のコミュニケーション技法も医学教育に新風を吹き込んで定着した。

  NHKーTVの「ドクターG」で、すっかり有名になった、名古屋第二日赤の野
口善令氏、藤田保健衛生大学の山中克郎氏、長崎大の池田正行氏はそれぞれの優れた診断推論の方法論を山口県保険医協会の講演会でも惜しみなく伝えてくれた。

 これらに今回の在宅医療を加えたものこそ21世紀の医療の主要な要素なのである。
 21世紀の医療のあり方を簡単に表現すれば「患者中心の医療」と「ヘルスプロモーションとしての保健予防」を軸にした健康権の確立である。

 それこそが21世紀の医療をめぐるパラダイム・シフトであり、「キュアからケアへ」の変化もその一部だと私は考えている。

  その意味では、まだまだ学ぶことは多く、話を聞くべき若いオピニオン・リーダーも続々と現れている。
 それを発見するべく地域医療部も、より先見性に磨きをかけて新たな企画に挑み
たい。
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