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2013年7月 2日 (火)

安倍政権の本質:雑誌「社会保障 夏号 2013 No449」中央社会保障推進協議会と、雑誌「週刊東洋経済6.29号 特集安倍政権の正体」

現在の社会経済構成体の土台が生産物の交換関係様式をもとに資本、国家、非営利・協同の第3セクター+新旧コミュニティの3領域から構成されているという前提で、現在の安倍政権について検討してみよう。

(これはマルクスが土台を生産物の生産関係様式をもとに資本と労働の2領域からなるとしたことの発展として、カール・ポランニ―によって発想され、現在では柄谷行人によってより精密に展開されているものの僕なりの変形である)

安倍政権の国家主義強調の理由は、「国同士が競争している」というイメージで、グローバル化しまさに大競争状態にある資本に国家の資金や軍備を横領させる口実を新旧コミュニティの上に形成される国民意識に納得させることである。これは新自由主義からの要求による。

しかし、それはイメージや世論操作だけでは終わらないものを含んでいる。

安倍政権は国家主義を吹聴しているだけでなく、国家そのものの膨張をめざしているようだ。それは天皇を元首にし、自衛隊を国防軍とし、戒厳令を可能にする自民党の改憲案によくあらわれている。

ここでは「国同士の競争に勝つ」すなわち「グローバル競争国家をつくる」という目標は資本の競争力強化のための口実ではなく、文字通りの国家自身の目標となっているのである。

国家そのもののなかにある他国との競争に勝つという本来の志向が安倍政権というツールを獲得したと言ってもよい。

これは「小さな国家」をめざす新自由主義主義路線を取る米日資本の志向や、日本を属国として支配し続けたいアメリカ国家の意向と必ずしも合致しない。

そこで安倍政権は米日資本には「世界で一番企業が活動しやすい国にする」という和解のための交換条件を出さざるをえない。またアメリカ国家のてまえ、安倍の代役として「村山談話」を否定してみせた高市政調会長の口を封じたりした。

ただし後者はあまり成功したとは言えず、もし今後を安倍首相が実質的な「村山談話」否定を続ければ、安倍の米国出入り禁止という措置が取られるという可能性も残っている。

こういう説明は資本が独占段階に達して、さらに国家機構を我がものにして自由に操る国家独占資本主義に到達しているのが現在の日本だという考え方をする人には珍妙にしか思えないだろう。

だが、今朝届いた雑誌「社会保障 夏号 2013 No449」中央社会保障推進協議会と、雑誌「週刊東洋経済6.29号 特集安倍政権の正体」を読んでいると、上のように考えたくなる。

前者では二宮厚美・神戸大学教授が安倍政権のめざすものは「グローバル競争国家」だと言い切っている。

後者ではアジアとの経済関係を重視する経団連・米倉会長と、中国を敵視する安倍自民党新総裁が机をたたいて怒鳴りあったという昨年秋の両者の会見の模様を伝えている(49ページ)。

また、国連事務総長までしたクルト・ヴァルトハイムがかってナチスの突撃隊将校だった経歴が暴かれて、その後のオーストリア大統領就任への英・米・仏の反対がきわめて強かった例が挙げられているのも参考になる。

それを内政干渉とはねつけて就任したクルト・ヴァルトハイムの自国入国を最後まで米国は許さなかったのである。安倍は第二のクルト・ヴァルトハイムになるだろうという予想さえある(66ページ)。

*これはアメリカの沖縄占領を緩和しようとした鳩山がアメリカから疎まれた逆ヴァージョンである。アメリカの許容範囲はそう広くない。

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