堤 未果「(株)貧困大国アメリカ」岩波新書2013
全日本民医連の理事会で会長の藤末医師からも勧められ、7月19日のデトロイト破綻のニュースに接したということもあって、急いで上記を読んだ。
アメリカの巨大食品小売業ー巨大食品加工業ー巨大食品製造業(農業企業)の独占システムが、アメリカの中下層の食生活を食い物にしている実態のレポートから始まっているが、重い内容なので要約は難しい。
167ページ 第4章「切り売りされる公共サービス」からデトロイトのことが詳しく紹介されている。
統治機能が株式会社に委譲され、一切の所得再配分がなくなり、金持ちの税金は金持ちのためだけに使われ、大企業が地方議会を丸抱えし政策作りを代行し実行させ、一見再配分と見える制度も実は貧乏人から残った金と労働力と健康を巻き上げる金儲けの道具になっている社会。
これがアメリカの到達しようとしている社会であり、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」安倍晋三2013・2・18の具体像である。
オバマがなんとか実現したアメリカの「国民皆保険」オバマ・ケアは2014年から実施されるが、これも高い民間保険料支払いを国民に義務付けるものでしかなく、すでに企業側の団体保険提供義務逃れを激化させている。実施の結果は医療破算人口の激増、医師の失業、公立病院の消失、過疎地の医療の荒廃、医療産業のぼろ儲けでしかないと予想される。
そこで実現する状態、すなわち、高い保険料を支払える富裕層がその保険料を貧困層に横取りされることなく、逆に貧困層のなけなしの保険料を横取りして、心ゆくまで高度医療を享受するという有様は、日本でも狙われている混合診療や、現行の介護保険で一部生じている現象と同じである。
デトロイトの荒廃した様子はgoogle mapのstreet viewを見るとよく分かる。
20階建てのビルがまるごと廃墟になったりしている。
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TTPが、怖ひ!
投稿: 闘士 | 2013年12月19日 (木) 03時53分