木皿 泉「昨夜(ゆうべ)のカレー、明日(あした)のパン」河出書房新社2013
計画的に、読み始めたい本・読み直したい本が沢山あって整理に困っているのに、全く無計画に割り込んでくる本がある。
今日は木皿 泉の「昨夜(ゆうべ)のカレー、明日(あした)のパン」河出書房新社2013 がそれだった。
おそらく、人生の長さ短さに関わらず、あるいは生前・死後に関わらず、ある人生の完成度は、到達した人間関係、言いかえれば関係者のQOLの総体で決まるということを訴えたかった連作短編である。
各短編毎に主人公が違うが、主要人物は巧みにつながっている。ちょっと分かりにくいのは全体の主人公であるテツコと一樹という二人の関係の始まりだが、105ページと232ページにある「にらむような目」という表現に気づけば簡単である。
ただ、せっかく魅力的に登場しながら一回きりで消える登場人物が多く物足りない気もする。もう少し分量がほしいかなという感じ。
暖かい筆致で多くの人を前向きな気持ちに導くだろうが、生活面からみた人の生き死にの話は今の僕には少し重い。
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