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2013年5月14日 (火)

明路 咲子ほか「北秋田市(旧鷹巣町)における福祉の興亡 住民主体は福祉のまちづくりにどう活かされたか」

明路 咲子ほか「北秋田市における福祉の興亡 住民主体は福祉のまちづくりにどう活かされたか」

http://www.umds.ac.jp/kiyou/n/21-2/n21-2meiji.pdf

を読み始めると、血中のノルアドレナリン濃度が上がったのか、動悸がして落ち着かない気分になった。

当時46歳の岩川 徹町長によって1991年から始まった新町政は、デンマークを模範とし、「入会・退会自由、無報酬、公開」が原則の住民政策組織「福祉のまちづくり懇話会 ワーキンググループ」の提言で斬新な福祉施策を進めた。

日本で初の24時間365日対応のホームヘルプサービス、日本で初の全室個室老健の建設などがその成果である。

しかし2003年、岩川氏の落選によって、その成果のほとんどは否定されていく

なぜそういうことが起こったか、というと、一見直接民主主義的な方法に見えたワーキンググループによる提言方式が、一般住民との間に接点を持たず、むしろ反感をもたれ、ワーキンググループによって自らの存在意義を否定されたと感じていた議会側の岩川町政攻撃に、多くの住民が乗せられていったのである。

この姿は、「住民参加はあったが、住民主体はなかった」と評価された。

高齢者自身は、全国でも最も高齢者自殺率が高く、自らを「穀(ごく)つぶし」と感じて喪失感を持たされやすい風土の中で、「高齢者福祉に金を使いすぎだ」という反町長派の攻撃に「俺たちのことはもういい」と言わされた。

ワーキンググループがタッグを組む相手は「社協」であり、依存すべきは社協のコミュニティワーク(幅広い住民の援助と教育)だったのだが、それがなかった、社協を独自の住民組織として遇せず、福祉事業の請負業者に貶めたことが最大の敗因だと著者たちはしている。

こうした分析を読んでいくと、日本に協議会型の直接民主主義を根付かせ、間接民主主義(議会)と調和をとっていくことがどれだけ難しいかわかる。

しかし、僕がそのことを切実な問題と考えるはるか以前に、46歳という若い町長が果敢にそれに挑戦していったという事実は、いっとき僕に落ち着きをなくさせるほどにスリリングで魅惑的なことだった。

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