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2013年5月 5日 (日)

水野和夫・大沢真幸「資本主義という謎」NHK出版新書2013:読み始める前に何が書いてあるか予想してみた

病院当直の夜の患者さんが途切れた時に、水野和夫・大沢真幸「資本主義という謎」NHK出版新書2013を読み始めてみたのだが、途中で全く別のことを考えてしまった。
この本の最初の所に書いてあることと、柄谷行人の『世界史の構造』岩波書店2010との関連である。
以下のようなこと全てがは、この本に書いてあるのではない。読み始めたばかりで、僕が持った見通しである。
例によって〇は勝手な要約、*は僕の感想である。

〇どの社会でも、経済はカール・ポランニ―が提唱したように①互酬 ②再分配 ③市場での商品交換の3パターンの組み合わせからなっている。
資本主義社会では③市場での商品交換が優位(ドミナント)になる

〇だが、市場=資本主義ということではない。
商品交換のための市場を1階にして、資本家と労働者という生産関係が2階に出来上がったのが資本主義。
それはブローデルという人が言っている。

〇15世紀の大航海時代から始まった世界市場システム、柄谷の用語でいえば世界=経済は、市場の世界的な広がりにすぎない。
そこにあるのは新しい産業資本主義でなく、古い商業資本主義でしかない。
だから、これをウォーラ―ステインが「世界資本主義システム」と名付けるのは相当おかしい。
「世界=経済システム」と名付ければ、それ以前の「世界=帝国」との違いが際立つはずだ。
*ここで気づいたのだが、商業資本主義と産業資本主義を区別がないものとすることから始まって、資本家対労働者という生産関係を見ずに済ませようと言うのが柄谷行人の立場なのではないか。
彼は、その様な生産関係を土台にして考えることに表立っては異議を唱えず、それを認めたうえで、新たに交換関係を土台にするという多面的な視点を加えてみせるという振る舞いをするが、事実上は生産関係の否定に踏み込んでいるのではないだろうか?
資本家対労働者の関係の代わりに、資本家対購買者・消費者の関係の方を重視すると言うのもその現れである。
資本家による労働者の搾取ではなく、生産方法の革新による賃金の低下のみを利潤の源泉とするのもそういう立場である。
生産関係と交換関係が資本主義の2側面だと言うのであれば意義があるが、交換関係しかないというのであればマルクス主義とは縁もゆかりもないものになるのだが・・・。

〇資本主義は、エレン・メイクシンズ・ウッドが言ったように、17世紀のイングランドの田園地帯で、農民が資本家的借地農と賃労働者に分裂して農業生産が飛躍的に向上したことから始まる(「資本主義の起源」こぶし書房2001年)。

〇こうして17世紀に始まった資本主義の下で爆発的に膨らんだ商品生産が、その販路として15世紀から始まっていた世界市場システムを利用し始めることから、ようやく世界資本主義システムが出来上がる。

〇それは現在もなお拡大しているが、中国、インド、南アメリカ、アフリカがそのシステムに完全に同質化した時、拡大が止まる。

さて、本当にこんな事が書いてあるのだろうか?

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