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2013年4月 1日 (月)

社会経済格差と健康格差の相関から、どうやって因果関係を見つけるか?

僕が理事長をしている医療生協の機関紙に、この前に僕が健康権について短い講演をしたときの記録が載っている。

誰がまとめてくれたのか、講演者の僕も唸ってしまう上手な論理の運びになっている。僕はこれほど理路整然としゃべる男だったのか?これなら誰にも分かりやすい。

なぜか、ブログにしか書いてないような、僕の最新の気付きも書き込まれている。すでに僕のtextを仔細に吟味する民俗学的なnoda-ism研究者が生まれているのだろうか【笑】。

*実物の希望者は、山口県宇部市にある医療生協健文会本部総務部にご請求下さい。

そういうものを眺めていると、僕は一つの発見をした。

それは乱雑に紹介されることの多い、社会疫学の相関データの間にある構造である。

マイケル・マーモットさんがイギリスの霞が関、ホワイトホールで公務員の健康を調べて発見したのは、社会的地位と死亡率の相関だった。現役時代、補助職の人は管理職の4倍もの死亡率だといこと。

それはまだ相関があるというだけで因果関係が証明されたものではなかった。

そこで、調べられた結果が「Solid Facts」確かな事実だったのである。

これは社会経済的格差と健康格差の間の相関を、因果関係として説明しようというものだった。

Solid Factsは、両者の間に8個の媒介因子(子ども時代、雇用状況、労働環境、貧困と社会的排除=教育を含む、地域の結びつき、薬物依存、食品、公共交通の利用しやすさ)の存在を確定した。

各媒介因子ごとに社会経済格差と健康格差が相関したのだ。

これがすべて同じ方向の正相関だったので、社会経済格差が、これらの媒介因子を経由して健康格差を生む、という因果関係が証明されたことになった。

その媒介因子の共通点を抽出すると、自律・社会参加・平等だった。となれば、これが「健康」やその同義語「QOL」というものの正体だと考えるのは自然である。

これで問題は一見、一件落着したかに見えた。

しかし、そのとき、一階層下に未解決問題があることが指摘された。媒介因子に認められる相関が因果関係を示しているかどうかはっきりしないという話である。問題のむし返しとも言えるが無視できることではないだろう。

たとえば、不安定雇用の人は正規雇用の人に比べて高血圧や糖尿病になりやすい、というデータである。ここでも因果関係は両方向に考えられる。

こうして相関関係が因果関係を現わしているかどうかという問題は、入れ子細工のようにずっと続くことがわかった。

だが、そもそも、社会現象に対して、因果関係の明確な証明などありえようはずがないし、あったとしても証明を待っていては被害者を救えないのだ。

ある水道水と健康障害の相関が分かったとき、因果関係は証明されないとうそぶいて、その水道水の中にある未知の有害物質が発見されるまでは、その水道水を使うということはありえないだろう。

本当の因果関係の証明は無限の階層で構成されているということを見通しながら、「いまのところ証明は実践で行うしかない」という見切りの立場をどこかで取る必要があるのだ。

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