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2013年3月25日 (月)

雑誌「月刊地域医学」2013年3月号:外山千也「総説―日本の終末期ケアの現状とこれから―」

以下は雑誌「月刊地域医学」2013年3月号に掲載された、ごく最近まで厚生労働省健康局長を務めていた医師が「病院や介護施設群を中心とした長期的なまちづくりの推進」と題して書いた文章である。

(月刊「地域医療」2013年3月号 特集「地域医療と看取り」;外山千也「総説―日本の終末期ケアの現状とこれから―」から読みやすくするため私が一部改変)

「これからはわが国にも、世界から患者が集まる急性期大病院周辺に患者が利用するホテル群を整備するという時代が来るのかも知れないが、それより早くに求められるのは、病院や介護施設群の周辺にさりげなく在宅診療や訪問看護、在宅介護が外付けされたサービス付き高齢者住宅やグループホームが配置されているようなまちづくりであると思う。
イメージとしてはヨーロッパの城を中心としたコンパクトな都市国家である。

一方、高度経済成長期に大量に作られたビル群は空きビルになることが多い。今後のビル需要の一層の減少、若年建築労働者の減少、低所得高齢者の増加を考慮すると、これらの古いビル群に耐震補強を施して極めて安価に高齢者向け住宅として再生し市場に提供することが必要だと思う。この方向のまちづくりはおもに区市町村が主体となるべきである。」

メディコポリス(若月俊一)や全国各地に自発的に生まれてきたケアタウン構想が厚生労働省に受け入れられるとこういうイメージになることがよく分かる。

片方に、ヨーロッパの丘の上にそびえる都市国家のような高所得者が集まる病院都市。
もう片方にその間を介護労働者が走り回る下町のビルを改造した高齢者アパート群。

貧富の2極化を前提にしたこの未来像を公然と元官僚の医師が語る所に慄然とはする。
しかも、それはすでに実現しつつある未来だ。丘の上に大きなリハビリ病院を中心にして精神病院、特養、ディケア、ケアハウスを林立させて遠目にはヨーロッパの山岳都市に見える複合体を作りあげ、ほぼ同じ設計で次々と別の都市にもそれを出現させている巨大病院チェーンが山口県、広島県他にまたがって存在する(和同会)。

しかし、後半に描かれている改造高齢者アパート群が市街地に溶け込んだまちづくりも、やはり街に溶け込んでいる病院や診療所がしっかりこれを支え、住民運動によって住居としての質の高さが確保されるなら、決して希望がないわけではない。

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