« ヌーサ・バウム&アマルティア・セン編著「クオリティー・オブ・ライフ」里文社刊2006年、竹友安彦監修、水谷めぐみ訳 | トップページ | 雑誌「世界」2013年 2月号からメモ »

2013年1月15日 (火)

産業医大・松田晋哉氏と日本福祉大・二木 立氏の意見を折衷してみると・・最重要なのは 24時間ケアで救急・ターミナル期を担うことができる訪問看護師の増加である・・・在宅と救急と病棟の3者を担当している総合医こそ、24時間訪問看護師とコアチームを作るべきだ

これから2030年ごろまでに起こるのは、

①75歳以上人口が全人口の2割を超え超高齢社会である。

要介護者が増え、認知症患者も300万人を超え、75歳以上男性で3%、女性で1.5%とされる癌罹患率からみて高齢癌患者の絶対数も増加する社会である。

*ここでいう癌罹患率は1年間のうちに新たに癌と診断される人の率で、癌を患っている人の率、すなわち担癌率ではない。担癌率については発表されている統計がないが、死亡原因からみると、後期高齢者の死亡児では4割以上ではないかと考えられる。

独居高齢者の割合も現在400万人から700万人に増える。

それは同時に、

②死亡者数が(2010年の年間100万人から)年間170万人に増える多死時代でもある。

その二つの要素から私たちが展望する医療介護状態は、

A 認知症・癌罹患、自立度低下、独居という問題点を中心に、医療と生活の両面から患者を支える在宅医療の質の改善と量の拡大

B 在院日数短縮でベッド回転を高めながら増加する死亡数のうち50万人くらいを引き受ける、すなわち病院死亡数年間130万に対応する中小病院の力量向上

ということである。

中小病院の在院日数短縮の必要条件は在宅医療の充実であり、そこで幾許かの在宅死の増加も期待できる。

ここで在宅死増加を主流とみなさなかったのは、現在国策のようにすすめられているサ高住もその個人負担増のため、都会の厚生年金受給者くらいしか入居できる見込みがないからである。

在宅医療の充実に必要なのものは何かと考えるとき、在宅に従事する医師の増加は当然のことだが、より本質的なのは、24時間ケアで救急・ターミナル期を担うことができる訪問看護師の増加である。

ここでイメージされているのは、入院医療の延長としての、すなわち「在宅という病棟」の夜勤看護師である。

そのとき、訪問看護師と直接的なコアチームを作るのは、診療所の在宅担当医師だけでなく、救急医療を担う中小病院の医師である。

むしろ、在宅と救急と病棟の3者を同時に担当している総合医こそ、24時間訪問看護師と組むこの時代の医療の主役だろう。

皮膚科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、癌治療など高度の専門的技量を有している開業医は在宅の実情への情報が提供されれば、総合医と24時間訪問看護師の作るコアチームの援助資源としての役割を果たすことができるし、それは在宅医療の充実に欠かせないことである。

産業医大の松田晋哉氏には、「病棟医療と在宅医療を連続したものと捉える」「地域全体を病棟とみなす」という構想があるが、日本福祉大の二木 立氏の2030年の死亡場所予測とそれをかみ合わせると上のような構造になる。

しかし、超高齢社会は医療だけが課題ではない。

それに、「地域を病棟化する」という発想には「社会の病院化」=医療者のパターナリズムで市民の主体性を損なうという批判も当然伴うだろう。

しこで、高齢者の健康権を全体的に見渡すと、「地域を病棟化」して医療的体制を整える以外に、経済的格差と住環境格差、地域での孤立が健康の社会的阻害要因として極めて重要だということに気づく。

経済的に言うと年収200万円以下で暮らす高齢者、居住で言うと老朽化した持家・安価で不良な民間アパート・エレベータのない中高層公営住宅に居住する高齢者の要介護率の高さを考えると、収入・居住を中心に抜本的改善を図り、同時に公共交通や高齢者地域の交流の活性化で最期まで社会参加を向上するような総合的な対策を医療・福祉の改善と結び付けて創造しなければならないということになる。

何よりも低所得も高齢者の居住環境をこれからでも改善することが、要介護率、重大疾患罹患率を確実に減少させるだろう。

そこでは、従来からの老人施設、すなわち療養病棟、老健、老人ホームの抜本的改善がなによりものカギになるはずだ。

|

« ヌーサ・バウム&アマルティア・セン編著「クオリティー・オブ・ライフ」里文社刊2006年、竹友安彦監修、水谷めぐみ訳 | トップページ | 雑誌「世界」2013年 2月号からメモ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 産業医大・松田晋哉氏と日本福祉大・二木 立氏の意見を折衷してみると・・最重要なのは 24時間ケアで救急・ターミナル期を担うことができる訪問看護師の増加である・・・在宅と救急と病棟の3者を担当している総合医こそ、24時間訪問看護師とコアチームを作るべきだ:

« ヌーサ・バウム&アマルティア・セン編著「クオリティー・オブ・ライフ」里文社刊2006年、竹友安彦監修、水谷めぐみ訳 | トップページ | 雑誌「世界」2013年 2月号からメモ »