潜在能力はクラウド、機能はアプリのようなものだ
アマルティア・センの唱えるCapabilityは「潜在能力」と訳されているが、字義どおりの意味のものではないので難解なものとされている。
「不平等の再検討 -潜在能力と自由ー」池本幸生ら訳、岩波書店1999 を読みながら思いついたのは、潜在能力というのはこの社会を蔽い、人々の生活の資源になるクラウドコンピューターのようなものである、ということである。
そのクラウドから誰でも好きなアプリをダウンロードできる。このアプリのことをセンは「機能」と呼んでいる。どのようなアプリの組み合わせを自分のコンピューターに備えるかは自由で人さまざまである。
持ち合わせるアプリの組み合わせが人さまざまであるにしろ、全体的に眺めると、人間らしく生活するのに必須なアプリは何かということはおのずから限定される。
そのアプリが基本的人権と呼ばれるのだろう。
そのヴァージョンアップはクラウドの方で常になされていかねばならないし、そのアプリをダウンロードできない人があってはならない。
そういうクラウドを作るのが政治の責任である。
◎クラウドが形成されていないのを絶対的貧困といい、クラウドがあるのにアプリの届き方が不足しているのが相対的貧困という言い方もできる。
*クラウドをアフォーダンスと言い換えることもできそうである。
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