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2012年11月20日 (火)

ヘルス・プロモーティング・ホスピタルHPHと健康権

‎11月22日に秋田民医連中通病院で健康権とHPH(ヘルス・プロモーティング・ホスピタル=健康権拠点病院)の話をするので、その準備中。持ち時間60分なのにスライドは130枚、これから50枚に削る作業をする。

少し長いが、HPHの部分の要旨をアップしてみる。干物に近い代物である。
「健康権の実現のために私たちは何をなすべきか」
1 HPH(ヘルス・プロモーティング・ホスピタル)の発見=「日常診療活動と健康権を結ぶ橋 」としてのHPH

2 HPHが唱えられた理由
①多くの患者の背景にはSDH(健康の社会的決定要因)の問題が集積しており、それへの対策としてのHP(ヘルスプロモーション)活動は治療の短期効果、長期効果を改善する
②知的組織としての病院は、地域のHPネットワークの中心・ハブとなる可能性が高い
③事業所としての病院は特徴的にリスクが高く、職員のHPには特に努力を必要とする

3 HPHの目標の第一はCHP(臨床的ヘルスプロモーション)。
臨床的というのは「患者が対象」ということ。

A:全ての患者について、五つの健康の決定要因を確認し記載する
① 運動不足  ②栄養不良   ③肥満   ④喫煙  ⑤飲酒

B: COPD、心臓病、糖尿病、手術後の患者に以下のものを含むリハビリテーション・プログラムを立て介入する 。①禁煙 ②飲酒の適正化③栄養改善 ④運動 ⑤心理社会的支援

C:成果の提示 例:手術後

*結腸切除において禁酒介入すると術後合併症の発生率が介入(-)群75%、(+)群30% 

*人工股関節・膝関節置換術に禁煙介入すると術後合併症の発生率が介入(―)群50%、(+)群18%

*脊椎手術に運動介入すると術後回復日数が介入(―)群6日、(+)群4日

D 訓練の重要性
 救急入院患者への禁煙と禁酒への介入  
 ○病棟看護師の簡単な介入の成功率47%
 ○介入の訓練を受けた看護師の介入を加えた場合の成功率97%
 →トレーニングのためHPH学校を毎年開催中

4 臨床的HP(ヘルスプロモーティング)は「患者中心の医療」PCMの一部であり、PCM全体がめざされる中で実現される。

「共同の営み」の発展としてHPHだと言える。

5 だが、これだけでは、個人のエンパワーメントレベルのHP(ヘルス・プロモーション)に過ぎなくて、HP(ヘルス・プロモーション)全体の入り口でしかない。

SDH(健康社会的決定要因)をコントロールするHP(ヘルス・プロモーション)にするには地域への働きかけに進まなければならない。

6 このときマーモット・レビューが指針になる。
• 子どもの健康・・・育児の援助ボランティア 歯科介入
• 青少年の教育・・・無料塾  フリースクールとの協力
• 雇用と労働・・・労働相談会 産業医活動
• 生活水準・・・ホームレス援助活動 
• 住宅・環境・・・一人暮らし老人訪問
• 保健メンバー養成・・・職員の地域活動の時間と技能研修の保障


7地域の健康づくり=健康都市 Healthy Cityづくり

社会的、経済的環境が人の健康の鍵を握るというコンセプトに基づいて、従来までは健康部門とあまり関係のない部門同士の協力の必要性が発見され、WHOによってHC=健康都市運動運動が組織されている

例 HPS(ヘルス・プロモーティング・スクール)というものもある。
学校を中核として地域社会や家庭のもとに包括的に進める総合的な健康づくり 。

8 学校とHPH、企業とHPHなど、HPHをハブにした協力関係が、最終的にHC(ヘルシー・シティ)を作る ことが展望される

千鳥橋病院の実践例
•当初、小学生の口腔保健改善を目指したが校医、歯科医師会の反対で挫折

•築35年の老朽化大マンション(約400戸)の理事会と協力して、マンション住人の孤独死防止の取り組みを始めた。

•マンションの空室を「地域保健室」として医師、看護師が定期的に訪れ懇談会、学習会を企画

・マンション側には、これに呼応するボランティア団体ができ、理事会では出来ない高齢者のお世話を始めた

9 職員の健康づくり
HC(健康都市)の中のヘルス・プロモーティング・カンパニーづくりの一部と位置づけられる。
病院らしい課題
 ①身体移動→腰痛多発→ノーリフティング(千鳥橋病院に実例)
 ②感情労働→メンタルヘルスヘルス障害多発→臨床心理士による定期的面談の導入
 ③非正規労働者の増加→職員家族への援助
これらの経験は、産業医活動も豊かにする

10 具体的なHPHの進め方
•千鳥橋病院を例にとると・・・
•病院管理部のもとにHPH推進委員会を作り 「一職場一HPH」運動を呼び掛ける
•職場が選んだ課題によって①患者の健康グループ ②地域の健康グループ ③職員グループに分け、相互の協力体制を作る。
•年一回の発表会を地域にオープンに行う。

11 結論
HPH(健康権拠点病院)としてHC(健康都市)づくりの中心的役割を果たすこと
→すなわち「安心して住み続けられるまちづくり」
→すなわち新しい福祉国家づくり

HPHは、民医連が健康権を日本に確立するため選んだ、戦略である。

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