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2012年9月21日 (金)

本当の医科歯科連携とは何か・・・ヘルスプロモーションにおける協同以外にはない

私の所属する内科と歯科併存の診療所が建築後35年を迎えて老朽化したので建て替えるという話が進行中である。

土地も購入し、設計図が何度か書き直されている。

せっかく内科と歯科があるのだから、両者の連携を特長の診療所にしたい、という声が出るのは当然のことである。

それを生かした設計にしたいということである。

その一方、「この20年同じ建物の中にいたのに何か連携らしいことがあったのか?何もできなかったのだから、いまさら無理せず、これまで通り別々にやっていけばいいし、設計もそれぞれの占有領域を決めて勝手にさせてほしい」という声も出て来ている。

たしかに、歯周病があると高血圧や心筋梗塞になりやすい、糖尿病があると歯周病が進みやすいなどという疾患レベルの話、それも不確かな話をもとに患者を共有しようとしても、患者からみれば負担増にしかならない。

では、在宅医療で、嚥下・栄養管理のチームを一緒に作る(地域のNST)というアイデアはどうだろう。これも狭い話である。在宅医療は広がろうとしているが、診療所の医療全体からみるとまだ小さい。

だから、展望できる連携は、そういう疾患治療レベルの話ではないと思わなくてはならない。

一緒にやるのはヘルス・プロモーティングなのだ。

疾患を発症して患者がクリニックに来る。それを治療する。そこまでは当たり前だ。それはある意味、自分たちが生活していく糧にすぎない。腕のいい医者といっても、商品知識の豊富な店員と変わるところはない。

だが診療行為のあと、なぜそういう疾患にかかったのか、再発させない方法があるのか、また、もう治らないとわかった時何かできることはあるのか、さらに考察のなかで知ったその患者の困難さを援助できることはあるのかなどと、考えをめぐらし行動するために、僕たちの診療所は作られたのである。

患者と医療従事者の共通の目標を作りだし、患者の健康(最近提唱されている新しい健康の定義によれば、QOLを絶えず向上させていくという姿勢そのものを健康という)を強化することは「患者中心の医療」の中心課題である。

それをヘルス・プロモーティングといい、1998年のWHOバンコク総会の後は、SDH、すなわち健康の社会的決定要因にもとづいてアプローチするという真に科学的な方法論が確立されている。

それによって、基本的人権である健康権は、空想的宣言から、実現可能な科学的プログラムになったのである。

2010年にはSDHの構造的な枠組みも示されていっそう理解しやすくなっている。

本当の医科歯科連携とは、このヘルス・プロモーティングの中にある。

対疾患レベルでの診療行為はもちろん別々だ。だが対患者レベル、さらに対地域レベルでのヘルス・プロモーティングでは完全に共同できる。

それが難しいと思えるのは、ヘルス・プロモーティング自体がまだ未熟だからだ。だが、それを成熟させ発展させることこそ僕たちの次の世代の課題である。彼らは今、それを始めなければいつやるのだ?

(対患者レベル以上での協同をコーディネイトするのが、医師であろうが歯科医師であろうが専門医としての総合医なのだ)

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