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2012年9月11日 (火)

日本の「生存権」の三つの起源・・・名古屋学院大学論集・東方淑雄「社会福祉に関する経済学論争史(1)」2007年から・・・生存権はドイツ由来、健康権はイギリス由来の用語だ

北海道の鈴木頌先生のブログhttp://pub.ne.jp/shosuzki/?cat_id=161223に、上記の論文の紹介があった。

これはとても長い論文だがネットhttp://www2.ngu.ac.jp/uri/syakai/pdf/syakai_vol4402_03.pdf

で読めるのでざっと通読してみた。

東方淑雄という人の名は知らなかったが、70歳はとうに超える大妻女子大学の元教授で、日本において「社会福祉」を政策のように捉えるのは社会福祉の矮小化で、本来それは国家の目的としてあるものだということを、「社会福祉の虚構」などという激しい言葉で語る人のようだ。それはそれなりに分かる話だ。

ただ、日本にそういう傾向を作ったのは、ケインズ経済学でいう「使用価値=効用」と再分配の大切さを無視したマルクス主義経済学だといわれると、あまり信用もできない気がしてくる。

そういう話はともかくとして、僕には憲法25条で始まった日本の生存権の起源に三つの要素があると明記されていたのが、生存権と健康権の関係を考える上で有用だったのである。

日本に生存権概念を植え付けた1947年の憲法25条は、アメリカ・ケインズ学派の社会保障論から発想されたGHQ原案を、森戸辰男、鈴木安蔵らがワイマール憲法をモデルにしたドイツ社会政策学的「生存権」論で書き換えたことによって成立したのである。

さらに生存権をより強固に日本に根付かせた1950年の社会保障制度審議会「社会保障制度に関する勧告」は、イギリスのベヴァリッジ報告の真剣な学習を基礎にしている。

この辺りについては、東方さんの文章を若干整理して引用しておこう。これは僕の記憶のためである。

「①19世紀末のドイツで世界に先駆けて社会保険を下敷きに持つ生存権を保障する論理的文脈のワイマール憲法的条文に、

②アメリカのニューディール時代に出現したアメリカ・ケインズ学派的政策が反映されて起草された

○憲法25条を、

③イギリスの福祉国家を創ったべヴァリッジ・レポートの論理で発展させた

○社会保障制度50年勧告。」

このように日本の生存権は、名称はドイツに由来しながら、三つの潮流の合体したものである。

今後、1946年WHO憲章に謳われる健康権がベヴァリッジ報告に基づくものかであることを確認したら、「ドイツ由来の生存権、イギリス由来の健康権」という、これまで、明確に意識されなかった用語解釈が出来上がるまでもう一歩というところまできた。

それが可能になれば、生存権か健康権かという不毛な論争に終止符を打てる。

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コメント

大妻女子大学人間福祉学科の元教授
東方淑雄先生について
言及してくださいまして恐れ入ります。

普段接する時は、
にこやかでオペラ好きの
先生でいらっしゃいました。

投稿: 学院 | 2012年9月14日 (金) 22時09分

コメントありがとうございます。
本文にも書きましたが、私たちのグループで東方先生に最初に注目したのは僕ではなく、北海道の鈴木 頌医師です。それはともかく、学ぶことの多い貴重な論文でした。お礼申し上げます。

投稿: 野田浩夫 | 2012年9月14日 (金) 23時32分

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