額田勲「がんとどう向き合うか」岩波新書2007を急いで再読したとき思ったこと
誰かに教えてほしいことは無数にあるが、今日思ったのは、人類の死因について大きな時代区分が可能かどうかということである。
想像だけでものをいうと、餓死や外傷由来の死亡の時代、感染症死の時代、脳・心臓の血管死の時代を経て、癌死の時代になったのではないだろうか。
若年者の癌を除けば、癌死は緩慢な死である。発症から死亡まで相当な期間があり、その期間のなかで自分の一生を振り返ったり、他者との新たな、おそらくより高い段階での関係を構築することが可能である。
それは、人類の精神史のうえで新たに到達した段階なのではないだろうか。
・・・考えてみると、死因が癌であろうとなかろうとにかかわらず、それは高齢まで人間が生きる時代になったということの特徴にすぎないのではあるが、癌を伴って明らかに有限な生存時間を提示されるということは、人間が自分に向かい合うということをより促進させるだろう・・・
加齢に伴い当然のように癌を発症して、癌と共存する貴重な期間を過ごして静かに死亡する作法を人類が獲得した後、また別の死因の時代を迎えるのだろう。もちろん、それが何かは分からないのだが・・・。
以上は、訳があって、額田勲「がんとどう向き合うか」岩波新書2007をざっと再読したなかで、生まれてきた感想である。
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