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2012年8月14日 (火)

雑誌「」2012年9月号 渡辺治講演記録「新自由主義、軍事大国化の政治に終止符を打つためには何が必要か ー民主党政権変節の教訓」

いつものように私なりの恣意的な書き直しを加えてノートを作成。

はじめに
2009政権交代の原動力は反貧困運動と構造改革反対運動だった。しかし、アメリカと財界の巻き返しの力のため、民主党政権は構造改革路線に回帰するという変節を遂げた。民主党政権の目下の課題は、原発再稼働、社会保障と税の一体改革、TPP、普天間の辺野古移転、および改憲である。この動きは、オバマの新自由主義回帰とも連動している。

単に新自由主義の被害拡大を阻止するという目標を掲げるだけの政権ができたとしても、新自由主義は終わらない。大企業に負担と規制をもたらし新しい福祉国家を作るという綱領と具体的な対抗政策を持った政権を樹立しない限り、新自由主義への回帰は防げないのだ。7月16日、原発さよなら集会に集まった17万人、6月29日首相官邸前に集まった20万人が新自由主義を終わらせようという方向への国民の力を象徴している。一方、新自由主義をさらに徹底しようという橋下「維新」への期待も 起こっていることへの注意を怠ってはならない。

1  民主党変節の教訓・・・構造改革と軍事大国化に反対する明確な目標と対抗構想を持つ政党を作らなければ、その目的は果たせない

運動が政治を変えた日本初の経験として、民主党政権の軌跡から私たちが学ばなければならないことは多い。
1990年初頭から始まった新自由主義政治は三つのプロジェクトを始めた。
まず労働者の賃金を削減して大企業の利益を確保した。リストラによって正規労働者を非正規労働者に置き換えたのはそのためである。
次に大企業の税負担を軽くするため、国の財政を小さくして、消費税の増加を図った。これが社会保障と公共投資削減の構造改革だった。
さらに大企業が内部留保としてため込んだ過剰資金を投下する新たな市場作りも進められた。これがTPPであり、原発輸出であり、新エネルギー開発だった。
この結果、日本社会にはかってない貧困と格差が広がり、反構造改革運動の高揚をもたらした。

実は、この運動をもたらした先行運動がある。それは唯一の超大国となり、世界の警察官を自ら任じながら、実力では20世紀に占めたヘゲモニー国家の地位から滑り落ちようとするアメリカの世界戦略再編の中で副官としての役割を要請されている日本の軍事大国化に反対する運動である。この運動は2004年に九条の会運動を生んでいた。小学校区単位での結成を目指し、2009年には7500に達した草の根の共闘組織は改憲世論を逆転させ、民主党の政策を左に振った。この運動が反構造改革運動に合流した。

日本の反構造改革運動は、ヨーロッパの反新自由主義運動とは違う困難があった。ヨーロッパには産業別労働組合を基礎とする福祉国家が新自由主義に先行していたが、日本で構造改革に先行していたのは擬似共同体的な企業主義国家で、これは構造改革に対して極めて脆弱で、国民の生活被害も甚大となった。

日本の反構造改革運動に労働組合がようやく加わって来たのは、リストラも相当に進行した2009年の年越し派遣村だった。このとき、反貧困運動、異なる労働組合のナショナルセンター、民主・共産・社民の政党の連携が生まれた。障害者自立支援法違憲訴訟、生活保護老齢加算・母子加算復活の生存権裁判もこの中で始まった。

民主党は2007年マニフェストで構造改革による被害の回復を謳ったが、2009年の鳩山マニフェストでは、以上の運動の圧力を受けて、構造改革そのものの転換を打ち出した。民主党の中に、構造改革派、利益誘導派に加えて、福祉実現派という第3勢力が生まれた。

この事態に至って、財界とアメリカの巻き返しが猛然と始まり、朝日と読売に代表されるマスコミが大々的に利用され、鳩山が潰された。菅は構造改革路線を掲げたことで地方住民の支持を失い、これほどに支持率の低い首相は利用価値なしと捨てられた。こうして野田が登場する。

このような民主党変節過程での二要因がある。一つは鳩山が具体的な対抗構想を持たなかったことで、もう一つは福祉実現派が分裂、他派に吸収されたことである。この過程で、変節を防ぐ方法の萌芽が見つかっている。障害者自立支援法廃止のための当事者参加組織である。

2 現在をどう評価するか

現在、野田政権は、構造改革と軍事大国化路線への回帰という範囲を超えて、新自由主義の大攻勢という段階に足を踏み入れた。

集団的自衛権の容認、オスプレイ配備がその狼煙だ。

焦点は大企業負担軽減のための一体改革にある。地域包括ケアの名の下で、医療と介護についての公的責任を地域のボランティアに丸投げしようとしている。

内部留保という名の過剰資金の投下先も探している。それがTPPだ。国内産業と社会保障を犠牲にして、輸出大企業の利益拡大を図るものでしかない。さらに原発輸出も新たな市場として狙われている。2020年までに中国に80基、インドに70基、それぞれが数千億という巨大産業になる。フクシマの経験を踏まえた世界一安全な原発、という売り込み文句も出来上がっている。そのためには、まず、日本での原発再稼動が最優先となる。

日米軍事同盟強化は、日本の責任の拡大という形しかない。

大きくいって以上三つの課題を遂行するには、大連立がどうしても必要だ。その上で、長期的には改憲を狙っている。

大連立作戦がうまくいかなかったときの保険が橋下維新である。この勢力を上手に使えば、大連立に似た効果をあげられる。

改憲についていえば、9条改憲だけでなく、構造改革と軍事大国化のための改憲という目論見が出来上がりつつある。自民党改憲案では21条の言論・集会・結社の自由を否定し、治安維持法を可能にしようとしている。28条に関して公務員の労働基本権も否定、100条では改憲発議に必要な議員数を2/3から1/2にしようとしている。98条関連では戒厳令も想定している(緊急事態規定)。

さらに改憲により、ナショナリズムでの社会統合も考えている。天皇の元首化、国旗・国家への忠誠、家族の絆が憲法上に明記されることが狙われている。

自民党案と違って、橋下維新は首相公選、参議院廃止で、決められる政治を憲法上でも可能にしようと主張する。これは、彼らの売り込みにすぎないに面が強い。

改憲の先導的な動きとしては、秘密保全法制定、衆議院定数の大幅削減、安全保障基本法制定の動きが注目される。大連立政府ができたとき、真っ先に着手するのは、これらである。

3 構造改革と軍事大国化に終止符を打つ政党、政治勢力をどう作り上げるか

九条の会型の運動が普遍的な意味を持っている。

良心的な保守も巻き込む一点の合意を大切にすること。新潟県加茂市長小池清彦氏は防衛相の幹部だったが、自衛隊は国民を守る組織だという誇りの元に海外派兵に反対し、九条の会に加わり、やがて、構造改革に反対するまちづくりに進んだ。

地域に根付くこと。地域の様々な動きに積極的に関わって行くことは、一点の合意を大切にすることと矛盾しない。

自分たちが立ち上がらなければ現状を変えられないと思う自覚を尊重すること。九条の会には戦争を知らない若い人がこないのは当たり前。心配しなくても若い人は原発再稼働で立ちあがる。

こうした一点で集まる運動にどう架け橋を掛けていくのか、これが今問われているところだ。

まず、民医連が、その架け橋になると手を挙げている。

いっぽうには改憲策動には機敏に鋭く闘う運動があり、他方に大きなうねりのような九条の会型の運動があるという、違ったタイプの運動を両輪にしていかなければならない。

もう一つは、対抗構想を明瞭にすることだ。
消費税ではなく、どういう増税をすれば福祉財源が確保できるのか。大企業への様々な課税、金融投資利益への課税、所得の累進課税強化をどのようにすればいいのかを説得力を持って国民にしめさなければならない。

そのさい、2012年2月7日に共産党が発表した消費税引き上げなしの福祉充実提案や、外交ビジョンはよいものとおもえる。

いっぽう、自分たち=渡辺治たちは新しい福祉国家を提案している。

新しいというには理由が3点ある。従来の福祉国家とどこが違うか。

一つめは、反共軍事同盟と無縁だということである。

二つめは新自由主義と闘ってかちとるということである。

三つめは労働組合と社民政党に担われるのでなく、被害をこうむっている高齢者、自営業者、農民、中小企業など広範な勢力に担われ、共産党も参加することである。

こうした展望も、民主党の変節過程の分析によって教訓を得て、豊かにされることを最後に強調したい。

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