2012.7.28 医療生協の理事会における私の挨拶
○総代会以降最初の理事会です。この間は九州の大水害や熱中症の多発などいろいろなことがありすぎて、挨拶を考えるのに困りました。今日からはロンドンオリンピックも始まっています。大飯原発が2基再稼働していることもご存じのとおりです。オスプレイも民間の大型貨物船で釜山から関門海峡をとおって岩国基地に運ばれ、すでに整備が始まっています。
○私たちに格別関連が深い事柄としては山口県知事選挙が明日に迫りました。今回の選挙はかってなく若い人たちが思い思いに参加して、脱原発派の候補が利益誘導型の政治を続けようとする官僚出身候補に迫っているのは間違いないようなので、もし当選してそのあとにいろんな困難が待ちかえていても、ともかく山口県が変わっていくことを期待したいと思います。
選挙戦の中で、上関原発が作られることはもうないからそれは争点にならないと思っている方が多いのには実は驚かされています。あとで、政府の設置するエネルギー環境会議が6月29日に発表して8月12日を期限に国民の声を集めようとしているパブリックコメントのお話をしますが、決して原発の新設は諦められているわけではないことを強調しておきたいと思います。
○脱原発の国民側の運動としては、大飯原発再稼働に反対する人たちが毎週金曜日に首相官邸前に自発的に集まって声を挙げており、多いときは20万人近くになりました。野田首相はその抗議の声を「大きな音だね」と言ってやり過ごしましたが、その報道に批判が集まり、次には「いろんな声が聞こえている」と言い直さざるをえなくなりました。
私も全日本民医連の役員会議で上京する時に2回ほど参加しました。先週7月20日には、鳩山元首相が集会に参加し、「官邸と国民の間がこんなに遠くなってしまったことをお詫びしたい、これからみなさんの声を官邸に伝える」と発言した後に官邸に入っていき、官房長官にあって反原発の意思を伝えました。実は、このことを「政治家にはもっと他にすることがあるはず」「鳩山は本当に宇宙人」と冷笑する向きも仲間の中にかなり多かったのですが、私は、原発推進派がそういうのならいざ知らず、脱原発をめざす側が言ってはおしまいだと強く反論しました。落ち目になっている鳩山元首相を嘲笑することがメディアの決まりごとになっているのに知らず知らずに仲間が毒されているあらわれです。運動が、鳩山元首相までもそういう行動をとるような影響力を備えたことに自信をこそ持つべきなのです。7.16の「さよなら原発集会」に空前の17万人が集まったことは、そのまぎれもない証拠であり、脱原発については絶対後退しない国民の意思が出来上がりつつあることに確信を持たなくてはなりません。
○先ほど申しましたエネルギー環境会議、略してエネ環のパブリックコメントについては、資料をつけましたのでぜひお目を通して下さい。原発0を選べば地球温暖化に手を貸すことになるぞと国民を脅かし、原発15、あるいは25を選べば原発新設が必要になることは隠しています。また「もんじゅ」のように核燃料を再処理して利用するという最も危険プランもこっそり書き込まれています。
私たちが求めるエネルギーと環境政策のありかたについて議論を大きくして、国民投票並みの規模でこのパブリックコメントに参加していきたいと考えますので、ぜひともご協力をお願いします。あとで参考になる動画を10分程度見ていただきます。
○その一方で、消費税増税と社会保障制度破壊の法案が同時に衆議院を通過し、一体になって進められようとしています。資料につけました通り、7月30日の全国商工新聞でも医療福祉生協連の高橋会長理事が「増税を止め、生存権の保障を」と訴えています。これをみても、TPPを含め国民生活を破壊する策動と闘う統一した運動の構築が急がれています。
ただ、私たち国民にはすでに自助や自己責任が過度に押し付けられています。いま、切実に必要なのは、生活保護含め、公的責任の大幅な拡大です。これ以上の自助を国民に求めることは残酷そのものですし、その補完を「共助」という新しい公共に託すというのはごまかしです。こういうときに、傍線を引いた発言を組織のトップがすることは私たちの要求を本当に生ぬるいものにしてしまいます。せっかく、現場の意見として真っ当なことを言っている前半部分が吹っ飛びます。
これだと「憲法25条にある最低限の保障だけはしてほしい」という、最小限の要求に私たちの運動を自ら制約する結果にもなります。これに対して、政府が「本当に困っている人のための生活保護にするよう努力している」と答えた時、「ではそうして下さい」という話になってしまいます。
「生活保護の人などは加入しにくい医療生協になっている」という批判もあると聞きますし、私たちの上部団体に当たるわけですので、あえて苦言を呈しておきたいと思います。
○さて、野田首相は悪政課題のすべてを実行しようとしているので財界や橋下大阪市長からは実行力があると持ち上げられているのですが、財界の言うとおりにやろうとしたのは野田首相だけではありませんでした。菅前首相もそうだったのです。しかし、菅前首相は支持率のあまりの低さに、もはや利用価値がないと、財界から見捨てられて退陣しました。
野田首相も国民の支持を失えば同じ道をたどります。菅前首相の時との違いは、野田首相が挫折するときは小泉政権以来の構造改革がともかくストップできることです。そういう展望が開かれています。
○以上を今月の御挨拶といたします。熱心な討議をお願いします。議長は恒例によりS常務理事にお願いします。
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