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2012年6月17日 (日)

私の「医療生協総代会 2012情勢説明」・・・山口県知事選と、被災地がれき問題を補足して

例年のように理事長として、情勢報告をした。県知事選と被災地がれき問題を、当日になって追加したので、若干バランスを欠いた構成にはなっているが、記憶のためここにアップしておく。

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私たちを取りまく情勢

この1年間の政治情勢の特徴は、20113月の東日本大震災と福島原発事故後の大混乱の中で菅内閣が退陣し、それを継いだ野田内閣が20119月から社会混乱に乗じて悪政路線を暴走したことでありました。

野田内閣は、20099月の総選挙で政権交代に国民が託した期待のすべてを裏切って、実態では1996年の橋本龍太郎、2000年代の小泉純一郎に続く第3の構造改革政権となり、まさに「惨事便乗型資本主義」の実行者となりました。

被災地の復興も大企業への利益誘導がめだち、放射能の除染も、震災がれきの処理も、原発関連企業に莫大な利益をもたらすビジネスになっています。被災者や避難者の生活再建、放射線被曝への援助は極めて不十分で放置されているに近い状態です。

その背景には、世界全体の資本主義がリーマン・ショックからEU危機へと金融恐慌の連鎖をもはや抑えられなくなっているのにもかかわらず、新自由主義、市場原理主義をますます深めているという問題が存在します。

その流れに棹さして、野田首相は以下の4点に政治生命をかけると明言しています。

  社会保障と税の一体改革の名でなされる、消費税増税計画と、社会保障の大幅削計画

  原発再稼働

  TPP加入

  普天間基地の辺野古移転など米軍再編都の一体化

いずれをとっても、国民生活への大打撃と、地域に密着した産業の致命的な破壊をもたらすものです。原発利益共同体のみならず、ごく最近話題となった一芸人の母の生活保護受給をめぐるキャンペーンのようにマスコミや政府寄り学者を最大限動員して世論誘導する姿勢も顕著になっています。

また、悪政を進めるための民主・自民・公明の大連立が策動される中で、改憲の動きが再び強くなっていることも見逃せません。

 しかし、これに反対する国民の運動は大きな広がりを見せています。

○TPP加入反対では、JA=全国農業協同組合連合会、日本医師会、日本看護協会、全商連など既成大組織のオールジャパン規模の共同行動が実現しました。

○脱原発をめざす運動は、戦争体験をもとに9条の会に結集してきた高年齢層や、不安定雇用に悩み「素人の乱」などと名付けられるデモを開いていた青年層にとどまらず、これまでは政治に比較的距離を置いていた雇用も相対的に安定していた子育て世代にまで広範囲に広がり、全国各地で創意あるデモや集会が継続的に続けられるようになっています。

 6月15日、政府が大飯原発再稼働を決めようとする直前は、名もない人がツイッターでよびかけただけで1万人の人が有象無象と夕方首相官邸前に集合しました。それまでの自然発生的なデモはなんとなく若者のお祭り的な要素も目立っていたのですが、さすがにこのときは各年齢層の多くの人々の押し黙った怒りが重く重く官邸前をおおったと参加した人は報告していました。

○また、東日本大震災・福島原発事故の被災者への支援は、国民が自分で自分を縛ってしまっている自己責任論から解放されたとき、どんなに高度で自主的な連帯を作り出すのかを見事に示しました。

○同時に、被災地支援の経験は、貧困・格差、それに伴う健康破壊を大震災と本質的に変わらない日常的災害として考えていく青年層を作り出しました。民医連を中心に全国に広がり続ける無料低額診療の本質も、貧困、格差、社会的排除という地上的災害に対するやむにやまれない災害医療だということが、東日本大震災への支援から逆に照らし出され、その価値が改めて見直されています。

 ○こうした運動の広がりのなかで、広がった運動相互を結ぶネットワークの必要性が痛感されるようになり、全日本民医連は自らを運動の「架け橋」とする方針を固めました。今後、多くの組織や個人が自覚的に架け橋となり、運動の力を数倍に強くしていけば、野田内閣の使命4課題のすべてあきらめさせ、政治を国民生活本意の姿に変えていく可能性が生まれます。

○今はまさにそのための「せめぎ合い」の時期だといえます。

 ○山口県でも全農やまぐち」をはじめとする多くの団体の協同するTPP加入反対の運動、福島原発事故から学び脱原発をめざす運動、粘り強く闘われている上関原発建設反対や消費税増税反対の運動、沖縄県民と連帯した岩国基地再編強化に反対する運動などが大きく広がり、相互の連携も生まれています。

○私たち医療生協はそれらの運動のいずれにも加わって架け橋の役割を果たそうと努力しています。

 また福島からの避難者への市民サイドでの支援も続いています。私たち自身の被災地医療支援も医療福祉生協連と民医連の協同で続けられています。

 一方、山口県民の生活を見ると、生活保護率が2008年度1.044%から2010年度1.173%と急上昇するなど困難が強まっています。とくに宇部市は1.55%から1.905%と県内でも群を抜いています。

国保料、介護保険料、後期高齢者医療料の滞納は減らず、滞納に対する差し押さえ、サービス打ち切りも目立ちます。雇用状況も2011年度の有効求人倍率が0.77倍と悪いままです。

○医療・介護に関しては、医師不足・看護師不足による「医療崩壊」が全く改善を見せず経過しています。たとえば山陽小野田市の救急医療は、地元の消防署が公的病院にもっと受け入れてほしいと詰めよらねばならないほどになりました。宇部、山陽小野田で最後の頼みの綱とされる宇部協立病院の救急受け入れ台数も、全体に占める率も減少傾向です。これはもちろん、改善しようにもできない医師体制の弱さが反映しています。

○そういうなかで2025年からピークを迎える超高齢社会には待ったなしの準備が迫られています。

○政府によって超高齢社会への切り札とされる「地域包括ケア」は、元来プライマリ・ケア領域での重要な目標概念でしたが、同じ名前で政府が目指す方向はそれとはまったく逆のものです。「自助」を社会保障の基本にするという言語道断な方針のもと、公的責任「公助」は最小限に抑え、さらに医療保険・介護保険などの公的保険を「新しい公共」=「共助」と名付けて公共性を骨抜きにし、医療・介護における自己責任論と自己負担を一層強く国民に押し付けるという大改悪です。

その中で、たとえば年間死亡数をとってみると、2025年には現在の1.5160万人となりますが、政府案では居宅・在宅死が現在の570万人になるとされています。在宅医療のありかたが政府方針のままでは、現在の自宅し程度を除いた数、すなわち50万人が、生活保護も受けられず、孤独死・放置死で死ぬしかなくなることが予想され、すでにその兆候は各地で明らかになっています。

○医療・介護を国民本位に切り替える「真の地域包括ケア」への抜本的な方針転換が切実に求められています。

医師養成でも逆流が起こり、年間新入院患者数3000人を満たさない中小病院には医師臨床研修病院の指定を取り消すという措置がいったん取られましたが、全国の民医連病院をはじめとする反対運動の広がりで、事実上撤回されました。引き続き中小病院や診療所に根ざして地域住民と患者の権利の担い手としての総合的力量を持った医師の大量養成が期待されています。

◎そのような情勢の中、2012年7月29日には県知事選挙が行われ、また遠くない時期に総選挙の可能性もあります。

ここで情勢の補足を2点申し上げたいと思います。

○一つは、県知事選の状況であります。まだ未確定なことではありますが、脱原発の候補者1人対原発推進候補者2人の対決の構図となる可能性が高まっています。私は昨年からこの脱原発の候補者、飯田哲也氏を県民の統一候補にできたらどんなに良いかと考え続けてきましたが、思いがけず事態は進んでいます。

同じようなことは7月8日投票の鹿児島県知事選挙でも起こっており、脱原発の向原祥隆氏(むこはらよしたか)が唯一の脱原発候補として立候補し、報道によれば、共産党も自主的に支持するということになっているそうです。

くしくも、「脱原発の薩長同盟」がいま出現しているのです。150年前を思い出して、といってもどんなお年寄りも、たとええば花田克己さんや浅野謙二さんという長老だってそんな記憶は持っていないので、無理な話ですが、西日本から脱原発の大きな運動を起こせれば、それが被災地への一番の支援となることは間違いがありません。

○追加の二つ目は東日本大震災のがれき処理の問題です。

はっきり申し上げて、一部で言われているような(3月18日しんぶん「赤旗」の主張に載ったような)「膨大ながれきを被災地だけで処理するのは無理で、広域処理は避けられない」というのは、誤りです。

6月1日の宮城県の日本共産党県議団のブログには以下のような記事があります。

「過去最大のガレキ量と何度も言われてきましたが、宮城県が受託した処理量1107万トンは、実は431万トンも減り、676万トンという大変衝撃的な数値が出てまいりました。
 ガレキが最も多い私の被災地・石巻は685万トンから半分以下の312万トンに激減しました。全国にお願いしようとしてきた広域処理、344万トン、それが114万トンしかなかった。ガレキの県外処理をお願いすることが、はたして適切なのかどうか

私も4月12日、日本共産党北九州市議団6名が石巻のガレキ視察に来た際、少量でもいいからぜひ処理をお願いしたいと要望した者として、とても納得できません。実際の3倍以上の344万トンを全国に処理を依頼しつづけてきた知事はきちんと釈明すべきです。」

と言っています。

まだ検討が十分に終わったわけではありませんが、がれきは全国にばらまくことなく、現地に専門の焼却場をいくつか準備して、処理すべきであり、それは可能なことです。このことがきちんと認識されていなかったため、北九州市では共産党もふくむ全会派が賛成してがれき焼却が始まりました。その影響は風向きで宇部、小野田市民への健康影響をもたらす可能性は否定できません。

防府市の受け入れに当たっても、上に述べたような立場で検討されているようですが、被災地かもち出すことなく現地で専門的なな焼却場を準備して処理すべきだという姿勢でことにあたって頂きたいということを、健文会での組織的な検討は経ていませんが、取り急ぎ申し上げておきたいと思います。

○最後に、私たち医療生協が、地域住民への生活支援機能を最大限に発揮して、平和で安心して住み続けられるまち・コミュニティづくりを進めることがかってなく切実にかつ大きな展望を広げているのが、今の私たちをめぐる情勢の最大の特徴だともうしあげて、議案情勢部分の提案といたします。ご清聴ありがとうございました。

 

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