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2012年5月13日 (日)

1970年ごろ・・・雑誌「atプラス 12」2012年5月すが秀美・・・自分勝手な安っぽい革命を説くこんな大人に若い人は騙されてはいけない

○今日は日直なので、救急車で運ばれてくる人を診察したり、病棟で亡くなりそうな人のお世話をしたりしながら、ぽつぽつと本を読み、思いつくことをここに書いていくことにする。

ふと思い出したのが、1970年、18歳で学生運動に加わったころ、実に馬鹿なことを考えていた、ということである。「労働者は容易にストライキなどで立ち上がれないから、身軽な学生がまず運動を起こして、それを労働者に波及させていく」と本気で語っていた。

今思うと、それは、よくいわれるような、1960年に李承晩政権を倒した韓国の「四月(学生)革命」の影響というより、むしろ中国の「文化大革命」の影響だったのかもしれない。上部構造における革命、すなわち文化革命を学生の運動が起こすことにより、連鎖的に下部構造すなわち生産関係の革命に至る、という考えでは共通している。こっちの方がより愚かしい。

*1960年は悲劇だったが、その再来としての1970年は惨めな笑劇だったという言い方も可能である。

当時、日本共産党の幹部だった蔵原 惟人氏なども経済革命を準備する文化革命の重要性などを強調していた。

蔵原氏の主張自体は間違いとまではいかないものだったが、結局は彼も含めて革命というものを安易にとらえ過ぎていた気がする。

フランス革命、ロシア革命、中国革命、四月革命と並べてみても、今の僕にはどれも到底「革命」とは思えない。中国革命も共産党を名乗る一派が政権を取ったというだけのことだろう。その後の中国に起こったことは、新聞記事くらいしか知らない立場でも悲惨の一語に尽きる。センもいうように、史上最大の飢饉による餓死は「革命中国」でおこったのである。

革命とはもっと長期の、もっと深い変化であるはずだ。

不破哲三氏も、日本に封建制が確立するまで400年間(1185~1600)に3回の段階的な革命があったとしている。一括してこの400年を封建革命の時期としてもいいだろう。

いまは、18世紀前後に資本主義が始まってまだ250年あまりしか経っていないから、ルールある安定した資本主義が確立するまでの「資本主義革命」が続いている時期なのかもしれない。それとも、エレン・メイクシンズ・ウッドのいうように、市場が残る社会を克服して、そのまま社会主義社会にたどりつくのかもしれないが、いずれにしても数百年はかかる革命のさなかにいるのは確実である。

それにしても1970年ごろは本当に愚かしく生きていた、あるいは愚かしく生きることを強要されていたといえる。

「学生が夏休みに帰省するなんてとんでもない、原水禁世界大会のカンパあつめなどやらせる活動はいくらでもある」と僕を叱責した専従活動家は、なぜか医学生である僕に憎悪を持っていたようだったが(・・・夏休みは帰省しないと日々の食費に困る貧しい医学生だったのに)、そう発言した数日後に逐電した。

いま、考えると、憎々しげに僕を叱責したその活動家にも経済生活の悩みが深かったのかもしれないと同情心も湧くのだが。

○ところが、今日、雑誌「atプラス 12」2012年5月を読んでいると絓 秀実すが ひでみ)という評論家が、ロールズ「正義論」をとりあげ、アメリカ一国内で「平等な自由の原理」「公正としての正義」の成立を可能と考えて資本主義という下部構造の不正義を疑いもしない「反革命」だと論じている。

スガが吉本隆明の主張を、結局は文化大革命と同様な下部構造軽視・無視の暴論だと指摘するまでは良いが、ロールズを反革命とまで呼ぶとなると奇妙としか言いようがない。

必要な政治闘争を倫理や文化問題に置き換えてしまう害悪があるとしてロールズを非難しているわけだが、その根拠は、「正義論」が今日の格差・貧困・雇用の不安定状況と労働者が闘う必要性を隠ぺいすることなのだという。変えるべきのは下部構造なのに、倫理を変えればよいとロールズが言っているというわけである。

そんな馬鹿なことはない。ロールズこそ、格差・貧困・劣悪な雇用状況がなぜ許されないかを指し示しているのである。それが許されないからこそ、下部構造のあり方を少しでも変えていくという運動が起こるわけで、それがどうして反革命なのか。

その批判は分かり切った話だ、その話に拘泥しているから実際運動ができないのだというつもりだろうか。冗談ではない。分かり切った話ではない。

センも言うように、飢饉の被害者は多く見積もっても全人口の1割にいかない。飢饉で困窮している直接的に人間だけが抗議行動や暴動を起こしても責任を取るべき独裁政権には痛くも痒くもないのである。自らが飢餓に陥っていない人々が政治的手段で飢饉の不正義と戦うことが正義なのだ。センはそれをエージェンシーという用語で表現し、カントのいう不完全義務と関連づけていたが。

かって、自分勝手な安っぽい革命を説いて学生を利用し、使い捨てにしようとしたた専従活動家とスガがだぶって見える。同じだ。

若い世代はこういう大人に騙されてはいけない。

 

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