社会契約と社会的選択・・・アマルティア・セン「正義のアイデア」明石書店2011年
578ページ: ロールズとセンの違いは、社会契約と社会的選択だと、センは言っている。
ロールズは正義を実現する社会契約すなわち制度とは何かを定義しようとし、センは現実の不正義を少しでも解消するための行動の選択を考えようとする。
簡単に言えば、現実を理想的な正義で裁断しようとするのがロールズであり、正義の為に現実を変革しようとするのがセンだということになる。ドイツ・イデオロギーのマルクスの系譜にあるのは、当然,センの方である。
しかし、本当にそうだろうかと、センは自問する。
ロールズもセンもどうしてこう正義の実現に執念を燃やすのだろう。ロールズは正義を実現する理想の制度の追求に偏っていたが、それに対する現実的なアプローチを忘れたわけではなかった。
実はロールズとセンは、違いより共通点の方が大きかった。二人とも、人間的とは何か、という問いをずっと抱き続けていた。センの立場からは、ロールズとは、互いの違いを言いたてるより、協力する道を探すことこそが重要なのである。
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