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2012年4月26日 (木)

ある医療安全をテーマにした集会での挨拶

平日に、中国四国の民医連病院の医療安全責任者が集まって、日ごろの経験交流をするというので、一応、その会の責任者となっているいきさつから、午前の外来を約半分にして、山口から岡山まで出かけた。10数人という規模の集まりであるが、活発な交流が行われていた。

そこでの僕の仕事は挨拶に過ぎない。

新幹線のなかでさっと原稿を作った。それは以下のようなものである。
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まず行事のご案内をしておきます。
7月21日、東京で「病院医療安全委員長会議」を開きます。
昨年3月12日に開くはずだった医療安全交流集会が中止になったための臨時の会議です。
参加対象は文字通り病院の安全委員会の責任者である医師です。一定規模以上の病院からは、具体的には臨床研修指定病院ですが、医療安全管理者の方の同席を求めるというもので、委員長が参加しないので看護師の管理者を代わりに出すという意図ではありません。必ず、医師である委員長の出席を図ってほしいと思いますので、病院の世論作りをお願いしたいと思います。
記念講演も準備して、医師集団がどうしたら安全問題に自覚的に取り組み、病院の安全問題で先頭に立つようになるかを議論する予定です。

医師が関わる安全問題では、若手の医師の研修の中で、医療安全をどのように位置づけ教育していくかという大きな問題があります。

研修指導者にもこの自覚は不十分なようで、最近出版された、日本で初の家庭医療学・病院総合医療学の教科書と銘打っている、進歩的・画期的な出版物でも、院内感染対策や、医療倫理の項目はあっても医療安全はありません。
そういう状況ですから、やはり現場から、若手医師の意識改革を図る取り組みの実例を積み上げることが必要になってきます。
そういう努力を集めて、2年後には医師向け医療安全テキストを作ろうという計画も出されているところです。

また、これはリアルなことですが、医療安全委員長は、病院長だったり、副院長だったりすることが多いため、みんなプレイング・マネージャーとして多忙であることが多く、かつ意識的には古い層に属すためコミュニケーションが下手くそで、実は、当人こそ医療安全上、病院の中で最も問題となる人であることも実は注目しておく必要があります。

また、多くの中小病院で医師が増えず、高齢化していく現状の中では、医師の補助業務を明確にし、多職種の協力を取り付けて医師業務が安全に遂行されるような工夫が必要ですが、それも病院長や医療安全委員長に課せられた役割です。

そういうことですので、ぜひ7月21日の病院医療安全委員長会議の成功にご協力をお願いしたいと思います。

次に、医療安全活動全体のの趨勢ですが、 医療安全活動のブレークスルーをなすものとして、ノンテクニカル・スキルの重要性を新しい総会方針にも書き込んだところですが、具体的にはチームSTEPPSの導入が検討されています。

アメリカの保健省医療研究品質局、略称AHRCアークと呼ばれる部局と、国防総省が共同して開発したものです。
例えば、潜水艦の中のように、権威勾配が極めて強い職場のなかで、その権威勾配に負けないで、必要なコミュニケーションをどうとっていくかというスキルです。部下が異常を発見したとき、どう司令官にそれをうまく伝え、 必要な司令官の決断を無駄な反発や不合理な無視もなく引き出すかという技法はSBARとして急速に日本でも普及しています。
アメリカでは軍隊の病院を皮切りに民間病院にも次第に採用され、全国で5箇所に指導者養成センターが作られ、そこに申し込めば、教材も購入できるようです。

職場の権威勾配をなくすということに腐心している私たちにとって、軍隊的な権威勾配はそのままにしてコミュニケーションを改善するということに違和感を持たないわけに行きませんが、もしかしたら到達点は同じところにいくのかもしれません。

というのは、かってクリティカルパスが建設工事に模範を取った効率一本やりの方法として確立されながら、医療の世界にはいると、見事にクリニカルパスとして患者中心のものに変形されたように、医療には危険なものを安全で役立つものに変える魔法の力があるのかもしれません。それを信じてあまり偏見を持たないで、チームステップスにも挑戦したらいいのかもしれないと柔軟に考えている次第です。

それから、私が最近、重視して考えているのは、地域連携の中の医療安全です。紹介状がないまま入院されてきた人の従来からの投薬のなかで何を継続するかどうかなどは大変むつかしい問題で、失敗も数多くあります。悪化の原因になっている薬を続けたり、やめてはいけない痙攣どめを中止してしまったりです。最近は私の病院では新しい救急入院患者に前医があると判明したら、すかさず自動的に地域連携室が紹介状を前医にお願いすることにしています。

さらには医療安全委員会同士の地域での連携を追求する必要があります。10年以上前、すべての病院の院内感染対策委員会が交流しないと、感染は病院から病院に広がると考えて、組織作りを一生懸命呼びかけましたが、その時は結局実らず、今回の診療報酬改定で初めて院内感染対策委員会同士の連携に点数が付けられました。

これと同じことが安全でもきっと起こると思いますが、今回のように上から強制されて連携するのでなく、下から自主的な連携を作っていくことが望ましいと思います。

市内の各病院の地域連携室メンバーを集めての講習会を医師会に提案して実現しそうなのですが、その中に安全の問題を入れ、医療安全委員会と交流したらどうかと思います。胃瘻を作る時の、病院間での基準の統一などが相当議論できると思えます。他の地域でもぜひご検討いただきたいと思います。

最後に、医療安全への患者参加という視点ですが、患者さんが危険に感じたことの収集を、「安全ご意見箱」の形で以前試みて結局定着しなかったのですが、これも出来れば再度、取り上げて、患者さんが何を不安に思っているかを知りながら安全対策を進める方向を確立したいと思っています。

私の報告はだいたいそういうことで終わります。
引き続き2年間よろしくお願いします。
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