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2012年4月 9日 (月)

雑誌「」2012年5月号 不破哲三「革命論上 マルクス、エンゲルスはこうして多数者革命論を発展させた」

1895年に書かれた、エンゲルスの事実の遺作「マルクス『フランスにおける階級闘争』への序文」の解説講義。

19世紀世界史の復習にとてもよい。

一つ、分からないのは不破さんが語る毛沢東とゲバラの評価である。

ここに書かれていることではないが、ロシア革命では、レーニンが基本的に正しく、スターリンは、初期の民族論や言語論などごくわずかの例外を除いて大半は誤りを犯し続け、革命を変質させた。明らかにレーニンとスターリンの間には不連続があるので、これは納得できる。

しかし、中国革命において毛沢東の「農村が都市を包囲する」という道筋の発見がたいへんな卓見であり、その後の「文化大革命」はそれとは無関係の晩年の誤りと、簡単に同一人格の毛沢東を割り切ることができるのだろうか。

その間には、日本共産党への武装闘争路線の押し付け、「大躍進政策」の大失敗なども挟まれているのだ。それに毛沢東の「哲学」はスターリンの引き写しだった。

そういう毛沢東の理論軽視・利己的な実益重視の傾向と現代中国の新自由主義化には何の関連もないのだろうか。

また、ゲリラによる武装蜂起以外の革命の道筋を見つけず、ラテンアメリカの民族や国民国家形成を認めないで革命運動に国境はないとして遊撃戦を実践したゲバラの誤りは不破さんの言うとおりだろうが、それだけでは、いまなお続くゲバラの民衆的人気が説明できない気がする。

彼の人生がいつまでもラテンアメリカの人々を励まし続けているなら、評価できるのはどんな点なのだろうか。

短い講義で、毛沢東やゲバラの系統的な評価を語れというのが、そもそも無理な注文であることは分かっているのだが、雑誌のままではあまりに簡単すぎて不破さんの話を読んだ気にならないという個所である。

ともあれ、この講義はとても分かりやすく、次回が楽しみである。

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