社会保険旬報2012・3・21号 平成24年診療報酬改定のメッセージ
夕方、午後の予約外来が終わり、医療生協の常務理事会までの手空き時間に上記の雑誌の2本の記事を読み、厚生労働省が自分では工夫したつもりでも結局は分かりにくくしてしまっているグラフや図を自分流にパワーポイントを使って書き直した。そうすると、今回の改定のメッセージ性がよく分かるようになった。
実は、その間に病棟では、僕の担当している患者さんが痙攣重積の状態に入りつつあったので、時間の使い方としては結果的には間違っていたのだ。「碌でもない雑誌を読んでいないで、さっさと病棟に行って仕事せんかい!」と品のない医療の神様は呟いていたのだろうが、その呟きが僕に届くのは少し遅れた。
常務理事会が終わったあと、かなり苦労して何とか乗り切ったので、この時間にブログを書く気にもなったのである。
さて、厚生労働省の目論見では2025年までに一般病床は現在の90万床から108万床に増える。半分に減らされようとしているのは7対1看護体制を取る高度急性期病床だけである。
ちなみに、病院・施設で死亡する人も、現在の年間98万人から90万人と僅かに減少するのみで、相対的には役割が下がっても、病院での看取りの手間は変わらない。
ケアの「脱医療化」は進み、自宅、居宅で死亡する人が5倍、すなわち約70万人になり、地域では孤独死、餓死が一般化するだろう(すでにその兆候が今年になって濃い)が、その一方で、病院医療の絶対的な量は減ることはなく、増え続けるのだ。
医療評論家の二木 立氏が言うように、病院は相変わらず成長産業のままだ。
これが2012年診療報酬改定のメッセージだった。
その時の問題は、民間生命保険が介入する自費診療収入で経営の安定した病院の医師や職員には、貧困と格差に苦しむ地域が見通せなくなり、結果として病院の持つ生活支援資源の地域への提供の道がきっぱりと絶たれることである。
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