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2012年4月14日 (土)

日本内科学会雑誌2012年3月号「日常臨床で遭遇する内科疾患の治療最前線」

上記のようにとても魅惑的な特集なので、まとめを作っておくことにした。すぐに全部は無理なので、少しづつ追加して行く。
1:副腎疾患

だいたい僕はものを知らないが、①アジソン病の人の色が黒いのはACTHの過剰によること、②アジソン病の多くが自己免疫疾患であること、③偶然発見されて非機能性と診断される副腎腫瘍(インシデンタローマ)とクッシング症候群の間に連続性があることを知らなかった。

○原発性副腎不全にはアジソン病と先天性副腎過形成(名前から受ける平凡なイメージとは違う特異な疾患)とがある。
色素沈着が特徴的だが、これはACTHが上昇しているからである。

低血糖発作は原発性副腎不全には少なく、下垂体性の副腎不全(下垂体腫瘍やシーハン症候群)に多い。

アジソン病は、かって副腎結核の「代名詞」のように使われたが、現在では大半は自己免疫性疾患である。

アジソン病と橋本病が合併したものがシュミット症候群。

先天性副腎過形成は、コルチゾール産生酵素欠損で、ACTHの増加により副腎からの男性ホルモン分泌が過剰になるもの。尿中17OHCSが低く17KSは高いという一見不思議な検査結果を呈する。出産時に母体から提供されるコルチゾールがなくなり副腎クリーゼを起こしやすい。

○急性副腎不全(副腎クリーゼ)は全身痛や嘔吐・下痢を呈し、急性腹症やインフルエンザと誤診されていることが多い。

ミネラルコルチコイドの欠乏で脱水が著明になっている。

12時間以上放置すると意識障害、腎不全に至る。

CRP高く、低Na、高K。

この時期血中コルチゾールの測定は無意味。病歴と症状で診断せよ。


○クッシング症候群、サブクリニカル-クッシング症候群、非機能性と診断される副腎偶発腫瘍(インシデンタローマ)は、実は連続した疾患である。

午前中の外来検査でコルチゾールが15μg/dl以上であればクッシング症候群を疑うのだが、そうでない段階でもそれなりの副腎ホルモン産生の自律性がある。

これは デキサメサゾン抑制試験で証明できる。 デキサメサゾン投与後の血中コルチゾールの高さと血圧の間には正相関がある。

すなわち高血圧+糖尿病+動脈硬化と診断されているなかにインシデンタローマがあることがかなりあるということになる。

一部は手術の適応になるはずである。

○4cmを超える副腎腫瘍は癌のことが多く、機能性の副腎癌の予後は極めて悪い。尿中17KSが高い。

○原発性アルドステロン症は高血圧の3.2%-21.7%を占める頻度の高い疾患である。

ARR=アルドステロンpg/ml / レニンng/ml/hr が200以上で疑う。

原因の副腎腫瘍はごく小さいものであることが多く画像診断は難しい。
副腎静脈血を採取しないと局在診断もできない。

○褐色細胞腫は大きな腫瘍であることが多い。蓄尿して測定する尿中メタネフリン+ノルメタネフリン0.5-1mg/日で疑い、1.8mg/日で確定診断に至る。

2:慢性腎臓病 CKD

○陸上生物が海に上がったとき、塩分と水分がない世界でどう生きるかが大問題だった。

傍糸球体装置として、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系が発達し、がっちりNaを保持することができるようになった。また尿細管ではHenleループが発達し、水分保持もできるようになった。

さらに脳や、腎臓や、心臓では、太い血管から直角に分枝して血圧を減弱させずに伝える緊張動脈Strain Vesselができて、Na欠乏、水分欠乏状態でも重要臓器内の血圧が保たれるようになった。

しかし、その後、塩分大量摂取や肥満や糖尿病発症など、高血圧を起こしやすい状況が一般的となり、生物として進化させた上記の利点が、今度は病気の原因となるのである。

○慢性腎臓病CKDは、原発性腎疾患によるものと、生活習慣病から生じてくるものがある。

原発性腎疾患の顕性蛋白尿は糸球体の疾患によるのでそれだけでは脳心臓疾患のリスクにならない。疾患が進行して後、腎機能が低下した時、すなわち糸球体濾過量が低下下とき初めて脳心臓疾患のリスクが高くなる。

○一方、生活習慣病による微量アルブミン尿出現は、腎臓弓状動脈から直接分枝する緊張動脈 strain  vesselたる糸球体輸入細動脈への高血圧負荷による傷害を意味する。

○糸球体輸入細動脈が損傷を受けているということは、同じく緊張動脈である大脳基底核穿通枝、心臓の冠動脈分枝も傷害を受けていることを意味している。
大脳基底核穿通枝傷害による疾患は、高血圧性脳出血、ラクナ梗塞、白質虚血性病変である。

*慢性腎臓病患者にみられる冠動脈の変化は、その他の緊張動脈病変が血管中膜の石灰化であると違い粥状硬化atherosclelosis である。メカニズムがどうして違うかは分かっていない。

いずれにしても微量アルブミン尿が緊張血管の傷害を意味し、脳心臓疾患のリスクであることは変わりない。これは糸球体濾過量の減少とは独立した、すなわち別の話である。

脳心臓疾患のリスクのメカニズムが両者では全く違う。

○ここで慢性腎臓病の定義に立ち返ってみよう。糸球体濾過量でみる腎機能、微量蛋白尿で見る腎損傷というおたがい独立した2系統の指標を用いて、それは判定される。

○糸球体濾過量の単位はml/min/体表面積1.73平方mである。体表面積を身長体重から求める式は少し難しいが、身長170cm、体重63Kgすなわち僕そのものが1.73平方mである。
これが60未満に低下するとCKDということになる。

○日本の疫学調査によると、50歳までに糸球体濾過量が50ml未満に低下すると透析に至る可能性が高いことが明らかである。

○また同程度の腎機能障害がある時、若い人ほど糸球体濾過量の低下が早いことが分かっている。80歳の人の40はあまり心配ないが、40歳の人の60は大問題となる。

○慢性腎臓病の人1300万人。一般診療での尿検査と微量アルブミン尿検査が重要である。

3:高血圧

高血圧は、その結果といえる脳卒中と心臓病を合わせた死亡数が癌に匹敵する
重要な疾患であるが、まだ克服された疾患とはいえない。

24時間にわたる降圧が大切。

特定の遺伝子を持つ人は、ACE阻害剤、ARB、利尿剤、Ca拮抗剤いずれにも抵抗性があることが分かった。

・・・そんなことくどくどと羅列されており、ほかに参考になる記述なし。
むしろ、新薬として華々しく登場したレニン直接阻害薬ラジレスとACEI、ARBの併用が、DM、腎障害患者で致命的になりうるなどという重要情報が(故意に?)無視されている。

4:心房細動

○大きなパラダイムシフトが起こっている。一世を風靡した、不整脈治療用のチャートである「シシリアン ガンビット」もはや不要のものとなった

○心房細動は併存疾患の結果であり、また脳卒中発症のマーカーである。

○洞調律維持は生命予後を改善とせず、たかだか弱いQOL改善因子に過ぎない。

○「孤立性心房細動」はもはや使われない用語である。心房細動以外何も疾患をもたない人は少ない。高血圧、慢性心不全、弁膜症、心筋症、糖尿病、慢性虚血性心臓病、脳血管疾患が代表的な併存疾患である。

○方針は簡単になっている。まず、生命を守るために併存疾患をしっかり治療するのが先決。

○次に、脳卒中の続発を防ぐ。これにはCHADS2スコアによる判定と、ワーファリン/プラザキサの使用に尽きる。

○CHADS2とは、ここでも何度も繰り返したが、慢性心不全、高血圧、75歳以上の高齢、糖尿病、脳卒中/一過性脳虚血発作で、各1点として2点以上が薬物治療対象とするものである。

○ワーファリン治療が必要なのに、実行されている人は40%しかいない

○プラザキサは2011年3月からワーファリンに代わる薬剤として爆発的に使用されたが大出血による死亡が多発し、ブルーレターが出た。

○患者のQOLを改善することができるという条件の上だけで、カテーテルアブレーションが有効とされる。その生命予後改善効果は不明である。

○レートコントロールも疑問視されている。60-80/分を目指してきたが110/分という緩い基準でも何も変わらないことが分かった。

5:糖尿病

○ブドウ糖は膵臓β細胞でのインスリン分泌を「惹起」する。

○インクレチンは膵臓β細胞でのインスリン分泌を「増幅」する。

○「惹起経路」が活性化されていなければ「増幅経路」もない

○食事量に応じたインクレチン分泌によって血糖変動の恒常性が保たれている。

○インクレチン製剤には注射と内服がある。

○GLP-1様物質である注射剤はDPPⅣで分解されず高濃度が保たれるので脳にある受容体にも働き、ブドウ糖の急速流入を抑えるので、食欲が減り体重減少につながる。

○DPPⅣ阻害剤である内服薬は、分子量が小さく経口可能なのだが、インクレチン濃度はそう高くならないので、中枢のGLP-1受容体には影響せず体重減少作用はない。それどころか、脂肪組織には十分効果があるので、この方向から肥満を促進してしまう。食事療法の併用が必要となる。

ジャヌビアは肥満をもたらす。

○DPPⅣ阻害によるインクレチン濃度の上昇は、膵β細胞内のCAMP濃度を上昇させて、インスリン分泌を「増幅」させる。

SU剤は膵β細胞内のCaイオン濃度を上昇させてインスリン分泌を「惹起」する。 惹起するという点はブドウ糖に似ている

SU+DPPⅣ阻害剤(ジャヌビア)の併用により重篤低血糖を生じるのはこのためである。

6:COPD

ほとんど新味のない記述。

COPDは全身疾患。

増悪時にはステロイド全身投与が必要。40mgを10-14日投与。

7:炎症性腸疾患
○TNF-α抗体製剤レミケードがクローン病治療の考え方を変えた。

弱い薬からの積み上げ方式(ステップ アップ法)でなく、レミケードから始めるトップ ダウン法がクローン病を治癒に導く。

○内視鏡像を良くすることがそのまま治癒につながる。

○潰瘍性大腸炎もほぼ同じ考え方に向かいつつある。

○炎症性腸疾患は「免疫制御機構に異常を生じた免疫過剰によるもの」と理解された。

8:関節リウマチ

数年前には考えられないことが関節リウマチの臨床現場で起こっている。

Treat to Taget=T2T 運動。

MTXが第一選択薬。

○生物学的製剤の爆発的進歩。

TNF阻害 病院用レミケード、在宅用エンブレル、ヒュムラ、シンポニー    
IL-6阻害 アクテムラ

T細胞阻害 オレンシア

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