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2012年3月18日 (日)

日野秀逸先生の講演から思いついたこと:「共助=新しい公共」の怪しさと可能性、福祉国家から福祉社会への方向性

今日は、地元の医療生協主催の「国際協同組合年」記念講演会に参加した。日野秀逸先生が講師だった。

講演会の趣旨ではなかったが、僕のなかでくすぶっていた疑問が解けたところが2点あったので記録しておく。

①「共助=新しい公共」概念の怪しさと可能性

これまで、政府・厚生労働省は社会保障について述べるとき、「自助、互助、公助」と3段階で語っていたと思うのだが、「地域包括ケア」の説明文書では「自助、互助、共助、公助」と4段階にし、共助の内容として、各種の社会保険、生活協同組合、NPOなどを挙げている。

そして、共助を「新しい公共」と呼んでいるようである。

これは国の責任である公助をさらに国民から遠ざけるものであり、これまで公助と信じられていた社会保険を、公助と互助の中間に位置づけて、国の責任から外そうというものにほかならないと思える。

国保法第1条には「国保は社会保障にためにある」と明記してあるのに、市町村の担当者はよく「国保は相互扶助だ」と平気で発言する。それは戦時中に公布された旧国保法第1条の「相扶共済」のことを言っているのだろうが、そのように発言する時彼らの頭の中はまだ戦争が終わっていないことを証明しているのである。

しかし、ここにきて、「共助」という言葉を作り出し、ともかく社会保障=公助ではないのだ、ということを国が言おうとしているのである。

したがって、僕たちは安易に「共助」という言葉に乗せられてこれを使用すべきではない。

一方、生活協同組合やNPOを「共助」に位置付けたことは、これらの組織がまるごと戦時中の「産業報国会」のように政府側に取り込まれるのでなければ、非営利・協同セクターを社会構成上の欠かせない一員として明確にさせたということであり、、一歩前進の側面もあると思える。

すなわち、資本、国家、非営利・協同セクターの三者が同じ盤面の上で陣地戦を展開する構図がはっきりしたということである。これは「共助」概念の意図せぬ功績だろう。

いまの社会保障地図では、市場化している自助部分で資本が利潤を得ようとしてはびこり、互助・共助部分で非営利・協同セクターが国民生活を支え、国家が責任を持つ公助部分はひたすら縮小して自助部分を広げようとしているわけである。

その意味で現代は資本が国家を私物化している「国家資本主義」時代と名付けてもよい。

国家を資本の私物化から切り離し、少なくとも中立、さらには非営利・協同セクターとの協力を実現することが僕たちの展望となる。これが僕たちの「新しい福祉国家」を目指す運動である。

②「21世紀には福祉国家から福祉社会へ」

これはスェーデンのスローガンだと日野先生が紹介したものである。

もはや国家の権力を用いることなく、社会生活の大半を協同組合事業でまかなえる段階が展望できればこういうスローガンが生まれてくるのである。

このことが僕の印象に残ったのは、全日本民医連の40回総会方針を巡って、僕たちが目指すのが「新しい福祉国家」なのか「新しい福祉社会」なのかというちょっとした論争があり、社会保障の責任は国家しか取れないという理由で「新しい福祉国家」を目指すということになったからである。

それはまったく正しかったと言えるが、「新しい福祉社会」を目指すという意見にも大きな意味があったといえるだろう。

いつまでも国家がなければ社会が運営できないというものではないという実例がスェーデンにあるからである。非営利・協同セクターの力が国家の役割を凌駕することは21世紀中にでも展望できるのである。

ただし、今は違う。

国家の機能への影響力を、資本と非営利・協同セクターが生死をかけて争っているときに、国家のあり様は目標に入らないとは絶対言えないからである。

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