朝日新聞1月4日にアントニオ・ネグリのインタビュー「新しい民主主義」
ネグリは多国籍大企業や国際通貨基金、世界貿易機関などが一体になって作られるグローバルな権力と秩序を「帝国」と呼んだ。そして、もちろんアメリカがその中心だが、アメリカそのものが帝国だというわけではないとした。
帝国の対抗勢力は「マルチチュード」と呼ばれる自律的で、可動性と柔軟性に富んだ労働市民層である。
こういう主張はアメリカからは気に入れられて、日本でも彼の「帝国」はNHKが出版を手掛けている。「NHK出版から発行される革命書!!」
ネグリがアメリカから気に入られた理由は、アメリカの目指すものを彼が的確に言い表しており、対抗勢力 マルチチュードが的を茫漠としたグローバルな帝国に絞る時、本当の主戦場たる国民国家での闘いがぼやけてしまうからである。
そういう意味で、僕はネグリはアメリカの「異形の代理人」あるいは危険な挑発者と思っているが、この記事を読むと彼にも変化が生じているのではないかという気がした。
というのは「ウォール街を占拠せよ」などの非暴力的な抵抗運動を彼が評価しているからである。
そして「真の意味の民主主義政治」とは?という質問に病院を例に取り上げている。若干僕流に変えてメモしておこう。
「それを病院の運営で説明しよう。真の民主的な病院とは、という質問になる。
単に治療や研究の場としてだけでなく、患者との人間関係、愛情、社会とのつながりなどを考えて、もっと人間的な病院を組織するにはどうすればいいかという質問になる。
その答えは、生活全般の中に病院を置いて考えればいい、ということになる。
こうした病院を政治に置き換えれば真の民主主義のモデルになる」
民主的な医療運動が、民主的な政治運動にまっすぐつながり、モデルになるとネグリは言っているのだ。
まるで、ネグリが民医連を研究したのではないかと思えるような話だが、これはヨーロッパ左翼の伝統かもしれない。
というのは、19世紀にあのウイルヒョウが「医療はすべて政治であり、政治とは大規模な医療にほかならない」と述べているからである。
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投稿: 震災孤児らの支援拠点を=14年、宮城で開設目指す―福岡のNPO「子どもの村」_786288 | 2012年1月 5日 (木) 12時11分