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2011年12月29日 (木)

雑誌「月刊地域医学」地域医療振興協会2011年10月号を読む

地域医療振興協会から無料で配布されているが、内実は自治医大出身者の親睦雑誌みたいなので医局では誰も読まないのだが、僕だけは丁寧にその内容を追っている。巻頭のインタビューにはいつも学ばされることが多い。

10月号は有名な松村理司医師(いまは洛和会音羽病院―僕には経営第一主義の病院の典型というイメージがあるのだが―)に山田隆司医師がインタビューしている。

○は恣意的引用、*は僕の感想である。

○中小病院でうまくいく場合は内科系の病院総合医と専門医がともによく頑張る場合。

うまくいかない場合は、専門医が仕事を総合医に任せて手を抜く場合。たとえば手術前の諸検査や中心静脈カテーテルなどの処置を総合医にさせて、自分は手術だけしようとするのですね。

専門医が9時ー5時ですっと帰り、総合医は毎日どたばたしながら夜の9時、10時まで仕事を続けるというのでは握手がしにくい。

○北里大学の竹本毅(「考える技術」の訳者である若い医師)が最近面白いことを書いている。

「検査よりすぐに手術が必要なのに、診断にこだわって総合医に精密検査の続行を要求する。その結果患者を死なせる。その一方で紹介が遅いと総合医をなじる。早く紹介すると『当科的には問題なし』と突っ返す。こういう専門医が最大の問題だ」

○そういう専門医は大学病院、大病院に発生しやすい。大学病院や大病院でしか役に立たないように養成されている。

○「立ち去り型サボタージュ」と騒いでいるのも、大学病院でしか働けないように養成された人が地域に出て、そこのニーズからくるストレスに耐えかねて去っているのも相当含まれるのではないか。

○最初から地域で育てるとそれを防ぐことができる。

○日本の医療で一番危機的なのは僻地の診療所でなく、中小病院、特に自治体病院だ。診療所の家庭医を目指す人たちもそれを理解して、中小病院を担う気持ちを持ってほしい。

○プライマリ・ケア連合学会も診療所の研修を強調するより、中小病院の方に力を入れないといけない。

○うまくいっている200-300床の病院は、ひとりアトラクティブな人がいれば、総合診療が輝く。400床以上ではそれでは難しい。もっと集団的でないとだめだ。

○100床前後の病院ではたくさんの医師は集められないけど、プライマリ・ケアの原点を見せることはできる。

100床の病院に寄せられるニーズはたくさんある。

往診が好き、救急が好き、鑑別診断が好きというふうに、出来上がった総合医の個性はいろいろ形があるのだが、そういう要素のすべてが100床でも十分見せられるのだから努力次第だ。

○総合医の示しうるアウトカム(結果、業績)は資格や論文ではない。いつまでも患者が来てくれて、地域から感謝されることだ。

○還暦過ぎると多くの医師は管理職からも外れる。健診担当などジェネラルな方向へすそ野を広げないと働けなくなる。超高齢社会なのだから75歳くらいまでは働かなくてはならない。そうなると超専門だった人もジェネラルでしかやっていけなくなる。ジェネラルマインドはなるべく早目に磨いておかなければならない。

○自治医大卒業生は、義務年限9年間の中で地域医療、総合医について価値を見いだせずマイナスのイメージのまま年限終了することも多い。そういう人たちをどうすればいいのかが悩みだ。

○明るいところからは暗いところがよく見えないのは仕方がないかもしれない。しかし、病歴と身体診察だけで相当なことができる、安易に検査に頼らないという手作りの医療の面白さはいつも変わらない。

*全体に共感することが多く特に異論めいた感想はないが、最後の○のところだけは脱力してしまった。これは結論ではありえない。

総合医を切実に必要とする大きな転換点にさしかかっている医療と社会の情勢が、松村先生には十分に理解されていないのかもしれないと思わせるところがある。だから、経営拡張著しい有名民間大病院の院長をしているのだろうけど。

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