どうすれば小地域で症例検討会を成立させられるか・・・significant event analysis SEAの応用「あれでよかったんじゃろーかカンファレンス」
開業医や中小病院の勤務医が集まって、日常診療スタイルの改善方法を話し合う場を作りたいと以前から思っている。
専門科毎の勉強会が大学医局同門会の支部のような様相で続けられているのは知っている。大学医局(地域によってはそこの基幹病院)の現役医師が交代でトピックを伝えに来て、年一回は教授(基幹病院の院長・副院長)が来て宴会になるというものなるらしい。しかし、それは僕には縁も興味もないものである。
最近思いついたのは、「あれでよかったのだろうか」という思いが残った症例を検討し合うという方法である。
これをはやり言葉で言うと significant event analysis SEA に相当する。
それよりも「あれでよかったんじゃろーかカンファレンス」のほうが僕にはかっこよく思えるのだが。
今、僕がここに持ち出すとすれば、最近の事例では以下のようなものがある。
多発性ラクナ梗塞で脳外科クリニック、発作性心房細動で循環器科クリニックに通院している82歳女性。
日曜日の午前11時ごろ、自転車に乗っていて急に左上下肢のシビレが生じたと言って午後1時病院で日直をしている僕に受診。
普通に歩けたが、気をつけて観察すれば、左上肢にごく軽いバレ―サインと腱反射の亢進があった。しかし。それもCTやMRIを検査している間に消失した。シビレだけが下肢のみに残っっていた。
CTは脳室拡大の所見のみ。MRIではFLAIRとdiffusionで右側脳室の傍に高信号。新鮮脳梗塞と考えて、ラジカット30mgを注射して帰宅させ、翌日かかりつけの脳外科クリニック受診を指示。
後日、クリニックからは「適切な処置で助かった」というお礼が伝えられた。しかし、僕としてはラジカット自体は急性腎不全多くあまり使いたくない薬の一つ。
本当にそれで良かったかどうか疑問が残った。
#2 60歳女性の肺結核
昨年、この患者さんの母親が当院に入院した。主治医は僕だったが、その時の記録はこうである。
「昨年10月10日から熱が下がらないという訴えで 近くの内科医院に受診していた。自立歩行できなくなったということで10月19日当院に転院した。当初、血色素6.3g/dlの著明な貧血があり、MCV74と小球性であるにも関わらずフェリチンは78と正常であったため、輸血施行するとともに、血液疾患を疑い10月30日骨髄穿刺施行した。その結果はなんと粟粒結核。胸部CTでもそれと矛盾しない像を認めた。喀痰塗抹では抗酸菌陰性だった。」
この話だけでも相当に興味深いのだが、
今回はこの話の続きである。
上記の患者さんは結局結核専門病院で亡くなったが、家族検診は保健所が担当して綿密に行われたはずだった。
2011年9月末、実の娘60歳が2週間止まらない咳という訴えで僕を受診。胸部XP正面では異常なかったが、側面でS6に大きなな空洞性病変があった。
保健所の家族検診の失敗はどうして起こったのだろう。
しかも、この患者さんは学童保育に携わっている。社会的影響は極めて大きい。
#3 メッケル憩室炎疑いで大学病院に緊急手術を頼んだ68歳女性
糖尿病で開業医院に通院中だったが、9月21日から食欲なく発熱が続く状態になり9月25日日曜日当院に救急搬入された。当直のパート医師が書いた入院時の診断は「脱水」とだけあった。
当初右のCVA叩打痛があったため腎盂腎炎かと考えたが、その後腹痛は右上腹部に移り、痛みと発熱が持続して状態は次第に悪化した。
腹部CTを27、28日と二日連続して撮影してみると、珍しい画像だが、メッケル憩室と思える部位の腫瘤が急に大きくなったようだった。そこで標題のように診断し、緊急手術の適応として大学病院に転院依頼した。
しかし、その後、メッケル憩室炎はなく腎盂腎炎だけだったとして逆紹介となって帰ってきた。これは大学病院の外科とよく検討し合わないと納得できない。
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