健康診断をどう健康づくりに生かしていくか・・・集団レベルの一次・ニ次予防をすればいいのだ!
これは、ある会議で発言しようとしてできなかったので、ここに書いているのである。
(だいたいに僕は人から意見を聞いてもらえないところがある。)
健康診断の機能として、すでに発病しているが無自覚でいる人を発見して治療を始め、それ以上悪化させないようにすることを「2次予防」というのは常識である。
しかし、それは健康づくりという立場からは敗戦処理に近い。崖から落ちてきた人の救済をいつまで続けていても仕方がない。
そこで、地域や職域という塊(マス)で健康診断の結果を吟味して、集団全体の問題を発見して、発病以前に予防するのが「1次予防」といい、これが健康づくりの本道である。
それは誰も分かっている。問題は、思い立ってそんなことを試みてもろくな所見はなく、集団としての問題など発見できないからである。
きちんと毎年充実した健康診断を受けることのできる集団については特にそうである。ある市役所職員の人間ドックの結果をまとめて、自治体労働者の健康上の問題を見つけてやろうと張り切ってみても、そこには健康マニアの中年男性集団を発見してがっかりするのである。この人たちの過剰な健康防衛に税金を費やす意味があるのだろうかという不謹慎な感想も生まれてくるだろう。
そんな難しいことをやって苦しむくらいなら、コレステロールが少し高いだけの人を集めて、心筋梗塞について自分が知っている話をして健康診断を受けた人を怖がらせていたほうが楽だし、手っ取り早く自己満足も得られる。そんなわけで、健康診断を健康づくりに生かすことはお題目に終わっているのである。
そこで、僕が考えたのは、塊(マス)として、当面選択べき集団を見定めようということである。
もっとも生活上の困難に直面している集団が何らかの形で健康診断を受けていないか?それを探そう。
言ってみれば、個人レベルの一次予防には手が出ないので、集団レベルでの一次・二次予防をしようということである。(ここで考えてみるに、個人レベルの一次予防は実は存在しないのではないか。社会生活をしていない人間はいないからである。個人レベルの二次予防が通常的である。次に集団レベルとなれば一次予防だというのは形式的過ぎる。明らかに健康状態の悪い集団があれば二次予防が必要になるのである)
たとえば、大きな工場に短期間の下請け作業で入るためにかき集められた人たちの形ばかりの健診。これを僕らは「入門健診」と呼んでいるが、これをまとめると何か出てこないか?
また、タクシー労働者の健診では?
過疎地域の限界集落での健診では?
自治体健診の中で生活保護受給の人や、一人暮らし高齢者に注目すると?
不安定雇用の人を対象にした街角の相談会での血圧に注目すると?
結局、「その人の置かれた不利な社会経済状態の解決こそが健康づくりなのだ」という
分かり切った結論しか出てこないかもしれないが、
それまでのプロセスが、健康づくりを支援するための具体的アイデアを生むだろう。
ある集団に、満足にご飯を食べる機会がなく、栄養不足の人が多いという所見を得れば、その集団の人たちのために、安いホテルの朝食バイキング程度のご飯を一日一回は安く提供する「朝飯食堂」などを始めることができるだろう。
それは松田晋哉先生に紹介してもらった事例そのままなのだけど。
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