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2011年7月18日 (月)

山岡淳一郎「医療のこともっと知ってほしい」岩波ジュニア新書2009・・・健康権との関わり

どんなよい目的の組織にしろ、他人と長時間接していると皮膚がひりひりしてくる。「他人のあてこすりにめそめそ泣くほど私の皮膚は薄くない」とマルクスは言ったが、気持ちに影がさしてくるのは仕方なく、出張の終わった日に、お茶の水の駅前の丸善で読みやすそうな本ばかり買い込んだ。

上記はその一冊。これから医療を職業にしようかと進路を考えている高校生のため易しい記述が心がけられている。

取り上げられているのは佐久総合病院のドクターヘリ、佐久総合病院の在宅医療、佐久総合病院の建て替え、福島県立医大を卒業して東京の大病院を研修先に選んだ研修医の日常、フィリピン・レイテ島のSHS(健康科学学院)とその卒業生であるバングラデシュ人医師スマナ・バルアさん、日本の健康保険制度の歴史、アメリカとキューバの対照的な医療制度の歴史、チェ・ゲバラの娘であるアレイダ医師のことば、さいごに「Where There Is No Doctor」(医者のないところ)という本の紹介である。

医療を出世の階段とみないで、他人に貢献するための場と考える若者にはよい参考書だろう、

私に刺激があったのは一か所、規制改革会議が「必要最低限の医療だけを公的医療保険で カバーし、それ以外は自由診療で」と提唱していることの紹介である(172ページ) 。これは最近の経産省の諮問機関などでも繰り返されている議論である。

私が刺激を受けたのは、「必要最低限の医療」などというものがこの世にあると考えている人がいるという点である。

  このブログでも何度か引用したが、国際人権規約1976 経済的社会的文化的権利に関する規約121項に「この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体および精神の健康を享受する権利を有することを認める」とある。

これからいうと、医療は「到達可能な最高水準」の健康をめざす以外にはありえないのである。もし「必要最低限の医療」などというものがあり、それを「生存権」の保障と呼ぶのなら、僕は生存権という言葉を否定して、「健康権」という言葉を対置しなければなくなる。

それは、その時点で到達可能な健康な最高水準の健康を保障される基本的人権である。

しかし、それは、僕の現時点の関心の焦点だというに過ぎず、この本には無関係なことである。

医療に興味を持つ青年に接する人達にも、また医療関係のうざい議論に疲れた人にも役立つ一冊としてお勧めである。

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