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2011年5月31日 (火)

総合医は「態度」attitudeの専門家だ

ここのところ、膨大な宿題に押しつぶされて少し引きこもりがちになっていたのだが、料理の予約をしてしまっていたので、仕方なく全日空ホテルで開かれた内科医会の総会へ行った。

定例の講演会は大学病院の総合診療部教授。テーマは最近の医学教育の話。宮崎医大を平成元年に卒業した人が教授になっている。客観的にはそう若い人ではないが、僕から見ると13年も卒業年度が下の人である。最近はどこにいってもそのように若い人に教わることが多くなった。

学生が受ける二つの試験のうち、OSCE(Objective Structured Clinical Examination)は技能skillを評価し、CBT(Computer Based Testing)は知識knowledgeを評価するものだという話、CBTはよくてもOSCEがだめだったら医師には向いていないのではないかという話、まずまず面白い。

しかし、態度attitudeの試験はない。もちろんOSCEの際、あいさつがきちんとできるかとか、共感の言葉が口に出てくるかというのは試験項目にあるが、それは態度としてはあまりに初歩的で、というより、心のこもらない挨拶や相槌などが得意というのはかえって怖い。態度については本当の試験もないし、教育もないというところだろう。

私の見解では、学生に態度を教えられない、試験できないのは、社会に総合医が圧倒的に少ないからである。なぜなら、態度attitudeの本質である、患者を人間として全体的に見ることができる、自分が何ができるか如何にかかわらず患者に向かいあうことができる、ということは、それこそが総合医の専門的能力だからである。自覚的な総合医が今のように少なければ、それを教える経験は社会全体に蓄積してこないから、教えようがないのだ。

いまのところ、学生に態度を教えられるのはむしろ看護師集団のほうである。彼らは医師から見れは徒手空拳で患者に向かい合い、何かしら援助の方針を引き出してくる。そういう賢い看護師集団との接触を多くする以外に、医師の態度の教育は望めない。だが、それはあくまで賢い看護師としての態度から学ぶということであり、最終的には総合医を増やして、医師自ら医師の態度を教育できるようにならないといけない。

そんなことを考えたり、言葉足らずに質問しながら、私はもう一つのことにも気付いた。

教授がいろいろ見せてくれた、直腸指診や脊椎穿刺などにもおよぶ多種多様なシミュレーターの開発は、本当に医師の教育に役立つのだろうか、ということである。痛みや羞恥で体をよじったり逃げたりすることのないプラスチックのモデルを相手に訓練すれば、すればするほど、人間を機械として考える傾向が出てきてかえって悪影響があるのではないだろうか。

しかし、それは私が口を出す領域ではない。そうやって教えてもらったことも教えたこともないので、何か根拠のあることが言えるはずがないのである。それでもすこし発言してみる。

さて、そういう話はともかくとして、料理は完食して帰ってきた。私のテーブルには予約しても欠席した人が多く、ステーキなどがたくさん余っていたので、持ち帰りの容器を頼んだら

「それは保健所から禁じられておりまして」

とウエイトレスが言った。この時代に食物を粗末にしていいのか!と考え、ここに保健所の所長が参加していれば文句を言ってやろうと思って会場を探したが、あいにく出席していなかったのは残念だった。

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