初期の震災避難所での薬物治療の注意点:雑誌「TIP」2011年3月号から
先日、親戚の若い人が僕に医師としての専門科目は何かと聞いたが、威張って答えられるものはない。大学の非常勤講師もしているのだが、それは専門を持たないところを買われているのである。
内科一般・消化器科・文芸評判科というところであろうかと考え、そう答えておいた。
そのほか親戚筋のプロパー文学研究者(二人いるのだが)からは、素人っぽいブログばかり書いていて仕事をしていないようだという評価も寄せられている。
たまには勉強しているところもこのブログに載せておかなくてはならないようである。
そこで 雑誌「TIP」最新号の浜六郎さんの文章からのメモでものせておくこととする。その妥当性にはところどころ異議がありうるものと思え、私の意見も添えてある。
*飢餓状態でのメバロチン投与は、感染症の悪化・神経障害・横紋筋融解を引き起こし危険である。避難所で使うべき薬剤ではない。
*降圧剤の中でもARBとカルシウム拮抗剤は炎症反応と免疫を抑制するので使わない方が良い。危機的状況での血圧上昇は生理的なものなので、降圧剤はむしろ使わない方が良い。
*避難所での感冒は重症化しやすいが、解熱剤(NSAIDs)は使わない方が良い。体を温めて自然に解熱するのを待つ。
*低栄養下でのタミフル使用も危険。
*抗不安剤、睡眠剤を大量に使用している人は中断させてはいけない。少しづつ減量させる。避難所で、災害数日間中におこる原因不明の痙攣、筋強直、意識消失は、抗不安剤・睡眠剤の中断による可能性がある。
*抗痙攣剤・抗パーキンソン剤の中断も危険。離脱症候群(痙攣、筋固縮、悪性症候群)がおこれば、とりあえずベンゾジアゼピンを投与する。
*避難所での不眠・不安、家族の死亡に対する悲嘆に抗不安剤・睡眠剤は使ってはならない。
・・・・これは若干不思議に思った記述だったが、同僚の若い医師(と言っても50歳)の意見によると自殺を導くからではないかということだった。そうかもしれない。
なお、抗不安剤が免疫力を低下させるとも浜さんは言っている。不安が減少すると免疫力は改善するはずだが・・・。現在メーカーに問い合わせ中。メーカーに聴いてわかるかと浜先生なら言いそうだが。
*SSRI とくにパキシル中断も危険。中断してしまったあとは少量から始めること。
*抗精神病薬、私たちになじみの深いものとしては、リスパダール、セロクエルがあるが、これは脂肪組織に沈着しているので、栄養不良で、脂肪組織が燃焼し始めると、急に血中濃度が高くなり、致死性不整脈、悪性症候群(発熱+筋硬直)、カタトニア(発熱のない筋硬直)などが起こりやすくなる。予防は絶食を避けることしかない。(統合失調症の人が手術を受けようとして絶食すると突然死する現象は多くの麻酔医にとって常識である)。
*ステロイドは内服も吸入も中断すると危険。最も激しい場合は急性の副腎不全=ショック状態。吸入剤の中ではフルチカゾン(商品名フルタイド、アドエア)がもっとも副腎抑制が強いので中断した際の危険が大きい)
*インスリン中断は危険は当然。しかし食事量が減っているので、これまでと同じ量のインスリンや経口剤を続けるのは危険。4単位前後のごく少量を続けておくとよい。
*アクトスやジャヌビアはこの際中止させたほうがよい・・浜先生の持論
*RFP中断後の再開にはアナフィラキシーがとくに生じやすい。
*甲状腺ホルモンの中断後も少量から開始すること。
*ビスホスホネートは骨吸収阻害だけでなく骨形成も阻害しているので、低栄養状態で使用すると危険。
*抗潰瘍剤、抗リウマチ剤、便秘の薬は続けた方が良い。
*破傷風トキソイドは避難所に必携である。
抗破傷風ヒト免疫グロブリン「テタガム」もあったほうが良い。
*抗生剤、気管支拡張剤、がん緩和ケア用のオピオイド、心不全用薬、抗不整脈剤、輸液製剤も必須である。
私=野田の気づきとしては、B型肝炎の人に使っている抗ウイルス剤バラクルードも絶対中断してはならない薬なので、かならず持参すべきだと思える。
そこで、私なりの、避難所医療必携薬剤リスト第一次を整理しておくと次のようである。
①降圧剤 ACE阻害剤 イミダプリル2.5mg 大量
②抗菌剤 クラビット250とセフゾン 中くらい
③抗不安剤 エチカーム 大量
④睡眠導入剤 レドルパー 大量
⑤抗パーキンソン剤 メネシット 中くらい
⑥胃薬 ランソラール30 大量
⑦便秘薬 センナリド マグミット 大量
⑧副腎皮質ホルモン プレドニン 大量
吸入はキュバール
*抗リウマチ剤はプレドニンで代用できるか?
⑨抗痙攣剤 バレリン200 少量
⑩インスリン 私ならランタスだけを持っていくが・・・少量
SU剤としては、無難にアマリール1mg 中くらい
⑪抗うつ剤 パキシル25 ・・・しかしほとんど使用経験なし、いいのか?
中くらい
⑫若干特殊な選択だが バラクルード(B型肝炎) ほんの少し
⑬沈降破傷風トキソイド、テタガムともに冷蔵が必要なので無理かも?
⑭整腸剤 ミヤBM レベニン 好きな方を 大量
⑮鎮痛剤 カロナール、ブルフェン、ナイキサン、ライぺックの中から好きなものを。 アンヒバ座薬もあった方が良い。 やや大量
⑯湿布 大量
⑰喘息の薬 メプチンエア ユニコン100.200 大量
⑱咳止め メジコン 大量 サリパラコデイン 中くらい
⑲がん緩和ケア用のオピオイド・・・これは難しい。レペタン座薬を少量持っていくか?
抗不安剤や睡眠導入剤、抗うつ剤、レペタンを厳重に保管する鍵付き箱が必要であることにここで気づいた。
*飢餓状態でのメバロチン投与は、感染症の悪化・神経障害・横紋筋融解を引き起こし危険である。避難所で使うべき薬剤ではない。
*降圧剤の中でもARBとカルシウム拮抗剤は炎症反応と免疫を抑制するので使わない方が良い。危機的状況での血圧上昇は生理的なものなので、降圧剤はむしろ使わない方が良い。
*避難所での感冒は重症化しやすいが、解熱剤(NSAIDs)は使わない方が良い。体を温めて自然に解熱するのを待つ。
*低栄養下でのタミフル使用も危険。
*抗不安剤、睡眠剤を大量に使用している人は中断させてはいけない。少しづつ減量させる。避難所で、災害数日間中におこる原因不明の痙攣、筋強直、意識消失は、抗不安剤・睡眠剤の中断による可能性がある。
*抗痙攣剤・抗パーキンソン剤の中断も危険。離脱症候群(痙攣、筋固縮、悪性症候群)がおこれば、とりあえずベンゾジアゼピンを投与する。
*避難所での不眠・不安、家族の死亡に対する悲嘆に抗不安剤・睡眠剤は使ってはならない。
・・・・これは若干不思議に思った記述だったが、同僚の若い医師(と言っても50歳)の意見によると自殺を導くからではないかということだった。そうかもしれない。
なお、抗不安剤が免疫力を低下させるとも浜さんは言っている。不安が減少すると免疫力は改善するはずだが・・・。現在メーカーに問い合わせ中。メーカーに聴いてわかるかと浜先生なら言いそうだが。
*SSRI とくにパキシル中断も危険。中断してしまったあとは少量から始めること。
*抗精神病薬、私たちになじみの深いものとしては、リスパダール、セロクエルがあるが、これは脂肪組織に沈着しているので、栄養不良で、脂肪組織が燃焼し始めると、急に血中濃度が高くなり、致死性不整脈、悪性症候群(発熱+筋硬直)、カタトニア(発熱のない筋硬直)などが起こりやすくなる。予防は絶食を避けることしかない。(統合失調症の人が手術を受けようとして絶食すると突然死する現象は多くの麻酔医にとって常識である)。
*ステロイドは内服も吸入も中断すると危険。最も激しい場合は急性の副腎不全=ショック状態。吸入剤の中ではフルチカゾン(商品名フルタイド、アドエア)がもっとも副腎抑制が強いので中断した際の危険が大きい)
*インスリン中断は危険は当然。しかし食事量が減っているので、これまでと同じ量のインスリンや経口剤を続けるのは危険。4単位前後のごく少量を続けておくとよい。
*アクトスやジャヌビアはこの際中止させたほうがよい・・浜先生の持論
*RFP中断後の再開にはアナフィラキシーがとくに生じやすい。
*甲状腺ホルモンの中断後も少量から開始すること。
*ビスホスホネートは骨吸収阻害だけでなく骨形成も阻害しているので、低栄養状態で使用すると危険。
*抗潰瘍剤、抗リウマチ剤、便秘の薬は続けた方が良い。
*破傷風トキソイドは避難所に必携である。
抗破傷風ヒト免疫グロブリン「テタガム」もあったほうが良い。
*抗生剤、気管支拡張剤、がん緩和ケア用のオピオイド、心不全用薬、抗不整脈剤、輸液製剤も必須である。
私=野田の気づきとしては、B型肝炎の人に使っている抗ウイルス剤バラクルードも絶対中断してはならない薬なので、かならず持参すべきだと思える。
そこで、私なりの、避難所医療必携薬剤リスト第一次を整理しておくと次のようである。
①降圧剤 ACE阻害剤 イミダプリル2.5mg 大量
②抗菌剤 クラビット250とセフゾン 中くらい
③抗不安剤 エチカーム 大量
④睡眠導入剤 レドルパー 大量
⑤抗パーキンソン剤 メネシット 中くらい
⑥胃薬 ランソラール30 大量
⑦便秘薬 センナリド マグミット 大量
⑧副腎皮質ホルモン プレドニン 大量
吸入はキュバール
*抗リウマチ剤はプレドニンで代用できるか?
⑨抗痙攣剤 バレリン200 少量
⑩インスリン 私ならランタスだけを持っていくが・・・少量
SU剤としては、無難にアマリール1mg 中くらい
⑪抗うつ剤 パキシル25 ・・・しかしほとんど使用経験なし、いいのか?
中くらい
⑫若干特殊な選択だが バラクルード(B型肝炎) ほんの少し
⑬沈降破傷風トキソイド、テタガムともに冷蔵が必要なので無理かも?
⑭整腸剤 ミヤBM レベニン 好きな方を 大量
⑮鎮痛剤 カロナール、ブルフェン、ナイキサン、ライぺックの中から好きなものを。 アンヒバ座薬もあった方が良い。 やや大量
⑯湿布 大量
⑰喘息の薬 メプチンエア ユニコン100.200 大量
⑱咳止め メジコン 大量 サリパラコデイン 中くらい
⑲がん緩和ケア用のオピオイド・・・これは難しい。レペタン座薬を少量持っていくか?
抗不安剤や睡眠導入剤、抗うつ剤、レペタンを厳重に保管する鍵付き箱が必要であることにここで気づいた。
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コメント
「お薬・手帳」は持ってなくてもいいので、処方されてる「薬」は「覚えましょう」
「後発」の方は「先発・名称」も「覚えましょう」。
「門前薬局」は「出来るだけ行かないで下さい」。自宅または勤務先近くに「かかりつけ調剤・薬局」を持つのが、「医薬分業」の本来の形です。
「処方せん」を「コンビニでカラーコピー」(1枚50円)しましょう。「お薬の説明書」「お薬手帳」の代わりになります。「すばやい調剤」に「患者様の、ご協力を、お願いいたします。」
やっぱり、火曜深夜はラジオ日本「アニメストリート」です。「オールナイトニッポン」「ラジオ深夜便」以外の放送を、お楽しみ下さい。
投稿: 日田こまち | 2011年5月11日 (水) 01時04分
自宅が病院から1時間以上かかり、疑似照会に支障きたす為、病院の近所の薬局にしないと困ります。(門前薬局ではない。)
薬局にも「標榜する科」があるのが自然だと思う。薬の種類が多すぎ、薬局に在庫できない。→院内の別棟薬局状態だが、責任者を別にたてるシステムが調剤薬局と思う。
投稿: あらべすく | 2014年10月 6日 (月) 04時26分
抗痙攣剤→バレリン200より、ベンゾジアゼピン。
バレリンは、体調によって分解能力が変わるから使いにくいと思う。高アンモニア血症を誘発しそうだが。
さらに、剤型が特大サイズで割線なし。小児では困る。しかも吸湿性。水害時に不向き。(カッターで割っても平常時に保存不能な吸湿性。)
デパスは離脱症状になりやすいから、むしろセルシン大量のほうが良いと思うが。
投稿: あらべすく | 2014年10月 6日 (月) 04時52分