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2011年4月18日 (月)

北村行孝・三島勇「日本の原子力施設全データ」講談社ブルーバックス2001・・・、「原発利益共同体」寄りの記述はなく、原発問題を知るためにまず最初に手に取る本として適している。・・・追加;「トリウム」原発に期待する雑誌「」5月号の記事

2001年発行だが2011年4月1日に増刷されたもの。おそらく全国の書店で急に売れ出しているのだろう。

内容は原子力発電の基礎知識、日本の原子力施設データ、事故・安全対策の3部構成で、全体にとても分かりやすい。

報道で多くの人が原子力発電所の構造に詳しくなった。中には東電内部の符牒まで知るオタクのような人がいて、福島第一発電所のことを「『ふくいち』よう」と擬人化して呼びかけ「いつまでモクモクしているんだい」と今回の過酷事故をおとぎ話にすることがあって、池田香代子さんを無限に悲しくさせてしまっている。

そういう言葉遊びによって事態をそらそうとする人は目立つのだが、頻用される用語、たとえば「軽水炉」の意味を知る人もそう多くはないだろう。

確かに低価格、軽装備の事故を起こしやすい原発だったが、そういう意味ではない。陽子1個、中性子1個の重水素からなる水=重水に対して、陽子1個の普通の水素からなる水=私たちが普段使っている水をわざわざ「軽水」と呼び、それを冷却材にしている原子炉が軽水炉なのである。

それから沸騰水炉型、加圧水炉型という2タイプがあるが、沸騰水炉型でも、100度で水が沸騰してしまうと困るので、原子炉内部は70気圧に加圧されて300度くらいまでは沸騰しないようにしているので、沸騰水炉型では加圧はないと誤解してはいけない。加圧水炉型ではさら160気圧まで加圧している。このような2類型があるのは、メーカー側の理由によるが、メーカーのシェアの関係で各電力会社ごとに採用タイプが違う。たとえば中国電力は沸騰水炉型、九州電力や四国電力は加圧水炉型である。

こんなことを恥ずかしながら僕も知らなかったのである。

なぜ知らなかったかを考えると、心の底の方で、原発事故はめったに起こることではないという油断があり、これまでの各種事故も詳しくは調べなかったということがあると思える。

そういう意味では196ページから210ページまでの主な原発事故一覧を仔細に思い出して記憶を新たにする必要もある。

全体として、「原発利益共同体」寄りの記述はなく、原発問題を知るためにまず最初に手に取る本として適しているのではないかと思う。

それから、本書とは直接関係がないが、雑誌「」5月号には今後の原発のあり方として、非軍事的な原発「トリウム原発」を大きく取り上げている記事があったが、これはどういうものだろう。

本書にはトリウム原発についての言及はない。トリウム原発をテーマにしているという「原発革命」文春新書2001は絶版らしく入手困難である。ウェブ上では、オバマがクリーンな原発として採用したがっているのはこれだというようなことが書いてあるのだが。

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