カート・ヴォネガット「ジェイルバードJAILBIRD」ハヤカワ文庫1985
中島和江他「医療安全ことはじめ」医学書院2010の最後の章にカート・ヴォネガットの遺作「国境のない男」からの引用があったことから、また何冊か彼の小説を読んでみようと思って手にした作品。
ジェイルバードとは何かの鳥ではなく、「囚人」のこと。主人公がニクソン大統領時代の政府内にいてウォーターゲート事件で刑務所に収容されているところから始まる物語なのでそういう題になっている。
そのストーリーについてはネット上でも的確な紹介がいくつもあるからあえて繰り返す必要もないことだが、主人公ウォルター・F・スターバックは学生時代に「アメリカ青年共産同盟」(日本の民青だな)ハーヴァード大学支部の共同議長、アメリカ共産党員となり、以後もその志を曲げたことのない人間、その思想によってさまざまな圧迫を受ける人間として描かれていることを、僕としては特に強調しておかなければならない。
*ところで、上記「医療安全ことはじめ」最終章でヴォネガットを引用していた粋な弁護士さんは児玉安司といい、名前からして「安全の司令官」というふうなのだが、1983東大法学部卒 ・1991年新潟大学医学部卒・1995年シカゴ大学ロースクール修了という経歴の人である。また中島和江さんも薬剤師から医師に転じて安全を専攻した人である。日常診療に汲々としてそれだけしか能がない多くの平凡な医師が間違いを起こさないように、世の中の有能な人びとが援助してくれる仕組みになっているのだろう。
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