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2011年1月 8日 (土)

猫屋敷と化した炭鉱住宅の訪問診療=日本の在宅医療の底辺

在宅医療の学習中。同じ法人内の診療所に頼んで、見学もかねてそこで手がけている訪問診療を手伝わせてもらうことにした。

この冬一番の寒さの昨日、寝たきりのリウマチ患者さんを訪問。まだこんなところが残っていたのかと驚く、昭和20年代の棟割長屋の炭鉱住宅。

まずアクセスが難しい。幹線道路からそう離れているわけではないが、集落に入る道路は極端に狭い。目印は集落の真ん中にある2階建ての「卓球センター」。炭鉱住宅集落の真ん中は銭湯というのが定番だが、なぜ卓球「センター」?

その疑問はわきにおいて、雪の中を患者さん宅に歩く。

これでもずいぶんきれいになったという暗い3畳一間の押入れの中に、万年布団に身をくるんだ患者さんがいる。 座敷のほうには猫が20匹前後、小さな電気ストーブの前に集合している。猫と生活ごみで足の踏み場もない。室温は外気に近い。

昨日から下痢をしているという患者さんがオムツを替えてくれというので同行の看護師さんがそれにあたる。本当は僕一人で来て僕がしないといけないところだったのだが。便が布団周囲を相当に汚染しているのも分かる。これは後で来るヘルパーさんが洗濯してくれるだろう。

診察を終えて外に出た僕には猫の排泄物の臭いが移り香している。

ホームレスの人のダンボールハウスに往診しているに等しいか?

しかし、すでに生活保護を受給しているこの人がなぜ市営住宅に移れないのか?ケアマネージャーら担当者は前からそれを勧めているが、猫と離れられないとのこと。しかし、あれだけの猫は飼われているのでなく、餌があるので野良猫が集まっているだけのことだ。生活保護給付費はかなりの部分猫用の缶詰購入に充てられている。人に頼んで買ってきてもらっているのである。

よりましな住宅に移り住まないのにはもっと別の理由があるはずだが、「猫のせい」で終わって、こういうケアが続いている。

「それが『この人らしい』生き方」と達観はできないと思うのだが。

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