土曜日の診療所
月一回の土曜日の診療所勤務。
東京出張の前の半日の仕事と思って気軽に出かけた。普段は眠ったように静かな診療所で、本当に私が眠ってしまうことが多い。
ところが、数年に一回という忙しさに巻き込まれることになった。
ノロウイルス感染で脱水の進んだ中年男性。近くのショートスティをやっている施設から肺線維症の増悪と思える急な呼吸困難の老人、SpO2 60%で 顔色は真っ青。肺炎の中年男性。九州大学病院で肺がん治療中だが、当地に帰省した日に高熱を生じた別の中年男性、貧血も著しい。明日が成年式の高熱少年の扁桃炎、実はEBウイルス感染症だということが軽度の肝障害合併からおおよそ診断できる・・・なぜ感染したかをあっさり言い当てながら、大丈夫だと教えてやる。
最後は高熱で顔が真っ赤に腫れあがった老人。最後の人は一目見て「丹毒」という皮膚感染症だと診断する。しかし、悪化の仕方がいやに早い。「人食いバクテリア」などというおどろおどろしい言葉も思い出す。CRPもとても高い。
おんぼろな診療所がERっぽい感じになっていく。数少ない職員が悲鳴を上げ始める。「もう手が回らないから、病院に紹介するなら自分で電話して下さい!!」
丹毒の人の件で地元の大病院にあたったが土曜日には取り合ってくれない。皆さん、社会的使命を忘れているのだな。結局、隣の町の大学病院しか頼りにならないことが分かる。その大学病院がなかなか電話に出ない。・・・それでも最終的には何とかなった。
肺線維症の増悪の人は酸素投与しても一向に改善せず、救急車を呼んで30分先の自分の病院に送る。
診療所勤務を終えて病院に帰ると、その患者さんがちょうど病棟に上がっていくところだった。まだ顔色が悪い。これから先は自分が主治医になるしかないので急に心配になる。
エレベータ―で病棟フロアに上がったところで老人大きく咳き込む。
何と、大きな餅の塊が出てきた。急にSpO2が跳ね上がり、顔がバラ色になった。死ななくてよかったなぁ。
このことを教えてやろうと、この人がいたショートスティに電話するが出ない。
まぁ、深追いは止めておこう。そろそろ飛行機に乗らなくては。
| 固定リンク
« 猫屋敷と化した炭鉱住宅の訪問診療=日本の在宅医療の底辺 | トップページ | 今週末の出張・・・立岩 真也・岡本 厚・尾藤 廣喜 『生存権――いまを生きるあなたに』2009 同成社、国立西洋美術館:アルブレヒト・デューラー版画・素描展≪デューラーと雪舟の類似≫+常設展の変化=ハンマースホイを購入していた »
コメント