非営利協同セクターと柄谷行人「交換様式土台論」との類似
民医連はかって自らを非営利協同セクターの一員と位置づけた。
非営利協同セクターは三つの極に影響を与えることにより、新しい時代を切り開く運動体となる。
その三つの極とは、大企業、国家、家庭・コミュニティである。
非営利協同セクターの活動は大企業の横暴を規制し、国家のあり方を変え、家庭・コミュニティを支援するというものである。
非営利協同セクターの強化こそ、ルールある経済社会成立の前提となる。
一方、柄谷行人は、マルクスが生産力と生産関係のみを土台として、その上に国家、法律、文化などの上部構造が聳え立つ史的唯物論を構想したのは、マルクスにとって一つの試みに過ぎなかったとする。
マルクスは、生産力―生産関係だけでなく「交換様式」を土台にした社会構成体を構想しようとしていた、それがマルクスを可能性の中心で理解するということに他ならないと柄谷は言うのである。
これは不破哲三がマルクスをその時代の中で読むと言うのと同じことである。
交換様式は商品交換、略取と再分配、互酬(贈与と返礼)の3種類からなり、それぞれを土台としてそれぞれに照応する社会構成体(土台と上部構造の複合体)が生まれ、現代においては資本主義、国家、国民共同体(ネーション)が成立してる。現代社会はこの3種の社会構成体の複合体として存在するのである。
しかし、その複合体によって正義は破壊され、人々は貧困と格差に直面し、環境の後戻り不可能かもしれない破壊の影響にもさらされている。その三位一体的な複合体は克服していく以外にないのである。
そして、資本、国家、ネーションの三位一体の複合体を超える次の時代は互酬が再建され発展する「世界共和国」だというのが柄谷の主張である。
しかし、資本、国家、ネーションの複合体を一つの平面にあるものとして捉え、それらにすべて関わりながら状況を変えていくのは、最初に述べた非営利協同セクターでもある。
柄谷は協同組合の発展に最大の可能性を見出だしているが、非営利協同セクターの典型的なものは協同組合である。
そうなると、私は民医連の展望と柄谷の展望の間にどれほどの違いも見つけられないのである。
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