川島みどりさんの講演
少し前の話になるが、9月17日に川島みどりさんの講演を聞いた。
川島みどりさんは今年79歳、もう世の中からなくなりかけている「武谷三男―川上武」の系譜にいる最後の人というべきだろうか。
しかし声には張りがあり、現役の看護大学教授である。僕はとうていこんな元気な高齢者にはなれないだろう。
講演のテーマは特定看護師制度の是非である。気管内挿管ほか相当侵襲的な手技を実施できる看護師を制度として作ろうという話である。
もちろん、今回、特定看護師制度を作ろうというのは、医師不足に対する姑息な対策というのが主な側面で賛成できるはずはない。
看護協会は看護師の地位向上のため役立つとして当然推進の立場に立っているが、これまで医師がになっていた責任を確固たるサポートもなく引き受けようというのは、自分で自分の首を絞める結果になるだろう。
しかし、僕が考えるに医師と看護師の役割分担の現状は実はあいまいだ。歴史的にも看護者のなかから医師が分離し確立したと考えてよい。近代の職業としての看護婦そのものは医師の補助者として誕生したのだろうが、看護僧などの看護者が医師に先行するのは当たり前だ。
そもそも病院自体が、医師などのいない看護者のみが運営する修道院からスタートしているのである。これは手元に何の資料もなく書いているので不正確だが、そう大きくは間違っていないはずだ。
医師と看護師の役割分担について、川島さんの話には「病気は医師が、しかし人間は看護師が担う」という昔ながらの機械的な区別の雰囲気が残っている気がした。それは目の前の医療現場の現象を説明することはできても、未来の可能性を開くものではない。医師も医学生物学的な疾病のみにかかわるだけではなく、患者、患者の背景にある社会と対峙するものだという認識はほとんど常識となっている。
では、どういう職種間の役割分担が今後必要になってくるか、これには大胆で、かつ長期にわたる議論の覚悟が必要だろう。
場合によっては、医師と看護師を分けないで職種としても一本化して融合するという方向が出てきてもいいと僕は思っている。1970年代に共産党が発表した医療系の学生の教育を論じた政策にもその方向性は示されていたように覚えている。
最後にそんな質問をしてみたが、質問の仕方が悪くてだいぶすれ違った応答になって残念だった。
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