サンデルの政治的立場について 8月5日朝日新聞インタビューから推測
猛暑の8月6日。1945年から65年が経過した。オバマのプラハ演説を契機に核廃絶への扉は少し広げられたように思うが、今日は私などが発言するべき時ではないので、静かに願っているだけにしておこう。
そこで、8月5日の朝日新聞にあったサンデルのインタビューについて、印象を記録しておきたい。悪い癖で、手元に資料を置かないで書いてしまうので不正確だが、サンデルは9.11以降の対「テロ」対策として「アフガニスタンとの全面戦争には反対で、パキスタン・イエメン・ソマリアにあるアルカイダの拠点への限定的な戦闘を行えばよいと考えた」むね発言している。
アフガン戦争支持の全米知識人60人公開書簡に名を連ねなかったのは良かったとしても、なんという中途半端な姿勢だろう。
アルカイダの拠点に限定した攻撃ができるかどうかという、軍事技術的な枝葉末節の議論を引き起こすだけである。
これに対して、サイードは、9.11のあとのインタビューで
「国連の協力も得て、国際ルールにもとづいて犯人を逮捕し裁くべきだ。
そのうえでこうした卑劣な攻撃を生む根源的な原因の解決に努めなくてはならない。
そのさい、ビン・ラディンらの悪意を援助し育てたのはアメリカ自体だったことを直視せよ」
と語り、アメリカの報復的・一方的な攻撃を明確に否定した。チョムスキーも同じ意見だった。
サンデルはそうした良識とはずいぶん遠いところにいる。
保守的なアメリカの世論をものともせず、アメリカの原爆投下を絶対的な悪だと断じたロールズの批判など、彼には出来るはずもないのではないか。
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コメント
サンデルの記事、参考になりました。
投稿: とおりすがりの | 2010年8月 6日 (金) 13時08分
とおりすがりのさん、読んでいただきありがとうございました。アメリカの保守も、日本と同じ一様ではないなかで、サンデルは日本で言えば誰くらいに相当するのだろうなどいう想像が湧きながら上記の記事を書きました。
ところで、昨日の広島の式典にアメリカ大使が参列したことが、さっそくアメリカ保守層の批判を巻き起こしているというなかで、まもなく来日するサンデルに誰かその質問をぶつけないものだろうかと期待しているところです。
投稿: 野田浩夫 | 2010年8月 7日 (土) 11時16分