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2010年7月14日 (水)

カードル(レーニン、宮本顕治)と エグゼクティブ(ドラッカー)

カードル というのは「党幹部」という意味らしく、レーニンや宮本顕治さんの書いたものによく出てくる。

二人にとって、共産党の建設とは「一枚岩のカードル集団」の形成のことだった。

有象無象の、どこの馬の骨とも知れぬ、あるいはスパイが混じりこんでいるかもしれない共産党志願者の中から、信用できるカードル候補者を選び抜き、そのあと鍛える。

そこには軟弱な志願者と根気よく一生を共に歩くという発想はない。猛烈な競争主義の勝利者がカードルである。カードルは命令に従って、より上級の幹部の生命防衛のために死ぬこともできなくてはならない。しかし国家の防衛にあたっては、カードルの温存こそ戦略である。

一方、ドラッカー「経営者の条件」の冒頭のところで、ドラッカーはエグゼクティブを定義して、「仕事で成果を挙げたいと思うものは、誰でもエグゼクティブ」だと言い切る。昨日入社した新人でさえ、仕事の中に自己実現を目指せば、エグゼクティブなのだ。

ドラッカーはまた、成果を挙げる人間に決まり切ったタイプはないと断言している。いかにも経営者然として傲慢にふるまう人もあれば、謙虚な村夫子然とした人もいる。この言葉は、管理職になったとたん、いかにも管理職らしい身なりや言葉遣いをし始める滑稽な人たちをまじかに見てきた僕には、そういう人たちへのドラッカーの批判だと読むことができた。

エグゼクティブを上記のようにとらえれば、どんなに弱い人でもエグゼクティブに育てることができ、たとえば、口下手で優柔不断で見た目もさえない人だって、エグゼクティブとして十分にやっていける、希望が持てる。

カードルとエグゼクティブをこのように比較すれば、小組織のトップとしての私としては、目標はカードル養成でなく、エグゼクティブ養成だと思う。

若い人は、レーニンや宮本顕治より、ドラッカーから読み始めるのがよい。

女子高校生だってドラッカーを読んで、弱小野球部を鍛えているのだ。漫画の話だけど、ね。

こんな剣呑なことをここに書きつけようと思ったのは、私の属する団体の文書の中に、しきりに「幹部養成待ったなし」とい感じの言葉が出てくるからだ。必要なのは幹部でなく、平等な人間関係で結びついた、向上心にあふれる集団である。そこに幹部という中心は不要だ。中心が要らないわけではないが、それを固定した幹部とする必要はない。誰でもが中心になりうるという可塑性を持って動いていく平等な集団こそが、私の理想である。

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コメント

最近読んだイタリア共産党史でも、「われわれは大衆政党となった。しかし、われわれは、今日カードルの党の性質すべてを党に獲得させなければならない」などと書いてありますね。要はエリート集団ですね。

投稿: chisa | 2010年7月17日 (土) 13時10分

chisa 様

コメントありがとうございました。

幹部教育強調に違和感を感じている理由は、古いエリート中心的前衛主義の名残ではないかと思うと同時に、「協同組合の株式会社化」の一表現ではないかと思うからです。

すなわち「左」と右への偏向としての幹部重視、ということになっているのではないという危惧です。

幹部がなにより大事というのは、陣地戦の運動においてはありえません。運動はそれよりも権威勾配の少ない職場づくりが大事です。運動においても中心は必要ですが、中心を固定化せず、平等感にあふれていなければ運動としては成功しないのは、「べ平連」というより、「九条の会」から私たちが学ぶことです。

したがって幹部が何より重要だという主張が生命力を持つの場面としては、経営の場面が残ります。それも、営利企業との競争の中に投げ込まれた時に必要な経営の場面です。

資本主義企業は競争の中で官僚的・軍隊的な構造を発展させるわけですが、シュンペーターの説く「創造的破壊」が必須であるという点で、それに依存しない仕組みも考えざるをえません。
しかし、医療生活協同組合では、もともとの前衛部隊的傾向もあって官僚的・軍隊的規律が自己目的化します。

それは資本主義との不利な競争の中で強制されるものですが
こうして協同組合が、劣った株式会社化していくことになります。

経営の場面でも、全員の経営、組合員の参加する経営という路線で、幹部中心主義が打破されれば、負けることが運命づけられている株式会社化の道を避けることができます。

投稿: 野田浩夫 | 2010年7月18日 (日) 20時18分

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